研究課題/領域番号 |
24701007
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
南部 晶子 熊本大学, 生命科学研究部, 研究員 (40572087)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / プロテオーム / 分化誘導 / 細胞外マトリックス / 細胞接着因子 / 腫瘍マーカー |
研究概要 |
本研究ではグリオーマ様幹細胞(GIC)の分化誘導制御分子群の解明を目的とし、ヒト患者腫瘍組織からGICを樹立・特性解析終了後、この樹立細胞と分化誘導を行った分化誘導細胞のタンパク質およびmRNAを回収し、融合プロテオミクス法(iTRAQ(MALDI-TOF/TOF, ESI-QTOF)/2D-DIGE法/トランスクリプトームDNAマイクロアレイ法の融合解析システム)を用いてこれらの細胞間における発現変動差異分子の解析を行った。iTRAQ法/DNAマイクロアレイ法のデータを統合マイニングし、分化誘導によって変動する分子を用いてGene Ontology (GO)解析を行った。その結果から、特に細胞接着因子群(細胞外マトリックス: fibronectin; 接着因子群: integrin αV)に注目した。検証実験の結果, integrin αVと細胞外マトリックスが分化誘導時に発現誘導されることが判明した。このことから、GICは分化誘導刺激により自ら分化に必要なECMを分泌し、環境を整え、分化誘導を促進すると考えられ、またintegrin αVとfibronectinを介した分化誘導はαV中和抗体と、その結合阻害ペプチドであるRGDペプチドによって顕著に阻害された。さらに悪性脳腫瘍の第一選択薬である抗がん剤temozolomide(TMZ)とRGDペプチド併用によりGICの細胞生存率がTMZ濃度依存的に減少し、同所性移植動物モデルにおいて、RGDペプチド/TMZ投与により腫瘍形成を阻害することができた。これらの結果から、inntegrin aVとfibronectinを始めとする細胞外マトリックスはGICの分化制御に関与していることが明らかになり, RGDペプチドは、がん幹細胞を標的としたグリオーマ治療に有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在, 融合プロテオーム: iTRAQ/2D-DIGE法/トランスクリプトームDNAマイクロアレイ法の解析が終了し, iTRAQ, トランスクリプトームDNAマイクロアレイ法のデータを統合マイニングが終了した. これらのデータからGICの分化制御に関与する分子を抽出し, これらの分子の細胞生物学的/生化学的手法によりGICにおける抽出分子群の影響について検討を行った. 24年度の研究計画である融合プロテオミクス法を用いた解析として概ね順調に遂行していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今後, これまでの統合データ (iTRAQ/トランスクリプトームDNAマイクロアレイ法)に2D-DIGE法のデータを統合マイニングし, 特に膜タンパク質に注目し, GICの分化制御に関与する分子群ネットワークの同定を行う. また, 得られた同定分子群については, siRNA, shRNAによるGIC内でのノックダウンの検討を行う. 各分子のノックダウンによるGICの分化様式の変化を解析する. 又, ノックダウンにて分化を促進あるいは抑制したGICを用いて, 細胞増殖/毒性試験等による抗がん剤の細胞機能障害の評価・タイムラプス共焦点顕微鏡による形態変化の観察, また, 細胞内で候補分子の発現抑制に伴って同時に変化する関連分子群の発現解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後, 同定分子群のGICに対する機能解析を行うため, 同定分子をターゲットとしたshRNA, siRNA, 同定分子群に対する特異的抗体を購入する予定である. またGIC移植実験に用いるマウス (ICRヌードマウス, NOD/SCIDマウス) も購入する予定である.
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