研究課題
近年、悪性脳腫瘍の再発にがん幹細胞が根底にあることが報告されている。しかしながら、脳腫瘍がん幹細胞 (Glioma stem/initiating cell: GIC) のマーカー分子発現、分化誘導の詳細なメカニズムは明らかにされていない。本研究ではGICの分化誘導機構に焦点をあて、分化誘導に関与する分子群を融合プロテオミクス解析技術を用いて明らかにすることを目的としている。本研究ではヒト脳腫瘍組織からGICを樹立し、樹立GICのがん幹細胞評価法により細胞特性を評価した。これまでの研究成果からGICは分化誘導により自らfibronectinを始めとする細胞外マトリックスを分泌し、接着分子integrin aVを介して分化誘導することを示してきた。GICの分化誘導はintegrin aVの阻害剤であるRGDペプチドおよびintegrin aV阻害抗体により阻害された。これらの結果から、GICは分化誘導刺激により自ら分化に特異的な微小環境を作り出すことによって分化することが示唆され、この分化に必要な微小環境を「分化ニッチ」と定義した。さらに、in vitro, in vivoにおいて、分化ニッチ停留時、GICの抗がん剤の感受性が増加することを明らかにした。これらの一連の現象を、これまでに樹立した3種類のGICクローンにて評価した結果、同様の効果が得られたことから、分化ニッチは脳腫瘍がん幹細胞共通の分化誘導制御機構であることが示唆された。さらに、融合プロテオミクス解析結果から、GIC維持・分化において発現変動する分子群を解析した結果、膜タンパク質、特にグライコプロテインが抽出された。これらの分子群の中から分化誘導前後において最も発現変動している分子CSPG4に着目し、GICにおける発現量を生化学的手法により検討した結果、CSPG4はGICにおいて発現し、分化に伴い顕著に減少することを明らかにした。また、CSPG4の糖鎖切断酵素によりCSPG4の形態が変化したことから、CSPG4の糖鎖は分化に関与していることを示唆した。
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