研究課題/領域番号 |
24701008
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
横山 勢也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20569941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肺癌 / エピジェネティクス / ムチン |
研究概要 |
癌による死亡は年間約33万人で、日本における死因の第一位となっている。そのなかで一番多いのが肺癌であり、難治性癌の代表となっている。現在、ムチン分子ファミリーの異常発現が、癌の増殖・浸潤転移・抗癌剤耐性・免疫機構回避などの各プロセスにおいて、悪性化に関与することが数多く報告されはじめている(Nat Rev Cancer 9:874, 2009)。当研究室では、早くからムチンに注目して研究を進め、ムチン発現と予後との関係やその発現機構を世界に先駆けて明らかにしてきた。そこで、これまでの研究成果を踏まえ、ムチン遺伝子の「DNAメチル化異常」をMSE法を用いて評価する事により、「悪性度」や「発癌リスク」を含めた質的診断にも応用できるマーカーの探索および、その有用性の評価を目的とする。 平成24年度は、研究協力者の病理医である米澤傑、東美智代、ならびに、外科医である堤田英明とともに、約30症例の肺癌腫瘍組織と対応する非腫瘍組織を保存、解析を行った。加えて、術中迅速病理診断時の組織切片より核酸を抽出し種々解析を行った。結果、実際のヒトの肺癌組織においてMUC1遺伝子はDNAのメチル化により発現が制御されていることを明らかにした。加えて、能動的DNA脱メチル化を行う分子群の発現が腫瘍部において上昇している子を明らかにしており、このような分子群がMUC1遺伝子のプロモーター部に結合している可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織検体や術中迅速病理検体の回収スキームも構築でき、申請時の計画に沿って順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施にあたり、手術摘出標本や生検標本等の臨床材料を使用して遺伝子解析を行う場合、また患者個人の臨床病理学的データを検索する場合には、患者あるいは患者の家族の同意を得、倫理審査手続きを経てこれらを行う。さらに、研究の遂行にあたっては、「ヘルシンキ宣言」および我が国の「個人情報の保護に関する法律」等を踏まえた上で、「ヒトゲノム研究に関する基本原則について」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」「臨床研究に関する倫理指針」に基づき十分な配慮を行う。 【臨床サンプルの採取・解析】平成25年度は、前年度に構築した組織収集スキームにより、組織検体ならびに術中迅速病理検体と臨床病理学情報の蓄積を行う。蓄積した症例のDNAメチル化解析、発現解析を行い、組織同様に結果を蓄積しデータベースを構築する。 【検出の評価】これまでの解析結果と臨床情報、病理学的解析結果との比較検討を行い、各種組織型(肺腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌・小細胞癌)の4群比較、および、正常部位と腫瘍部位の2群比較を行い「悪性度」や「発癌リスク」を含めた質的診断にも応用できるマーカーの探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するために必要となる自動免疫染色機器や新規メチル化解析機器などの研究に用いる主要な解析機器や、マイクロディセクションや生検標本 (EUS-FNA)など臨床材料の調製に関しては、現有機材を用います。よって、経費の主要な用途は、消耗品であり内訳としては、病理組織切片の作製に伴う試薬代や免疫組織化学等の検出のためのプローブ(主に抗体)の購入費用、各種解析の実施に伴う部品類及び試薬類の購入費用が主たる経費です。また、情報交換や学会で研究発表するために必要となる出張経費、及び論文発表の際の諸経費(英文校正、別刷り代)を計上しています。 これら各項目の金額については、これまで行ってきた研究で必要となった経費を基準として算定しており、これらを本研究費補助金から支出することは、関係法規に照らしても十分妥当であると考えます。
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