研究課題
癌の早期発見、治療や病態のモニタリングのための診断バイオマーカーの開発、新規治療法及び個人に合わせた治療法のための治療薬(抗体医薬)の開発は急務となっている。そこで本研究は、胃癌患者由来の抗体ファージライブラリを用いて、胃癌の新規バイオマーカーの探索・癌抗原特異的抗体の単離を目的とした。本研究により、従来の方法では同定できない胃癌特異的抗原の発見が期待される。まずは、胃癌患者由来のヒト一本鎖抗体(scFv)ファージライブラリの構築を行った。胃癌患者由来のヒトscFv 抗体ファージライブラリの構築を行う為に15名の胃ガン患者のリンパ球からmRNAを精製し、抗体遺伝子を増幅させ、ファージミドベクターに組み込み抗体ファージライブラリの構築をした。その後、遺伝子配列の解析、ファージ表面への抗体分子の提示効率の解析から今後の実験を行うに十分な多様性を有することが分かった。作製した胃癌患者由来の抗体ファージライブラリを用いて、胃癌患者の血清・腹水の癌抗原に特異的に結合する抗体の探索を行った。胃癌患者と健常者のそれぞれの血清・腹水をHu-14カラムによりhigh-aboundant proteinを除去した後、イムノチューブに固定化を行い、吸収操作と濃縮操作を繰り返しおこなった。この操作により癌抗原に特異的に結合する抗体ファージの濃縮がおこなわれていると予想され、現在、濃縮された抗体ファージのクローン解析を進めるための準備を行っている。
3: やや遅れている
今年度の目標は、抗体ファージの作製から癌抗原に特異的に反応する抗体ファージの濃縮、クローン化を行い、癌抗原に特異的に反応する抗体の単離を行うところまでであった。しかし、今年度達成できたのは、抗体ファージの作製と癌抗原特異的抗体ファージの濃縮のところまでであった。進捗度としては、目標の2/3ぐらいだったので、達成度は低い。来年度は、もう少しスピードを上げて抗体の単離、抗原の同定へと進んでいく予定である。
1. 癌抗原に特異的に結合する抗体ファージの単離: 抗体ファージの作製は完了し、癌患者血清・腹水の癌抗原に結合する抗体ファージの濃縮を終えたので、抗体アレイを用いたスクリーニングにより、癌抗原に特異的に反応する抗体クローンの単離を行っていく。2. 特異的抗体に結合する癌抗原の同定: 単離した癌抗原特異的抗体を用いてcDNA タンパク質アレイまたは、免疫沈降法・次世代質量分析計を用いることにより癌抗原の同定を行う。3. 癌抗原、自己抗体の腫瘍マーカーの有用性の検討: 数百の血清・血漿を用いて、同定した癌抗原、その抗原に対する自己抗体の腫瘍マーカーとしての臨床的有用性の検証を行う。
該当なし
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Journal of Proteome Research
巻: 12 ページ: 208
10.1021/pr300824m
巻: 11 ページ: 4201
10.1021/pr300322q