研究課題
前年度にあきらかにした、漢方薬の紫根の成分であるβ-HIVSがdUTPase抑制作用をしめす可能性があり、関連の研究をおこなった。β-HIVSの類似化合物を5種類作成した。これらを肝癌培養細胞に添加し、薬理作用を確認した。MTT assayにて細胞増殖抑制効果を、定量的RT-PCRにて、dUTPaseの遺伝子発現抑制効果を確認した。dUTPase発現と癌幹細胞との関連を107例のヒト肝細胞癌組織で検討した。stem cell markerであるEpCAM陽性の肝癌ではdUTPaseの発現が強く認められ、門脈浸潤部位で特に強い傾向が認められた。EpCAMの発現とdUTPaseの発現は統計的に有意に正の相関を示した。さらに、ヒト胎児肝と成人肝組織におけるEpCAMとdUTPaseの発現を検討したところ、胎児肝のhepatoblastではEpCAM陽性かつdUTPaseが強発現しているのに対し、成人肝では胆管細胞でのみdUTPaseおよびEpCAMの発現を認めた。またフローサイトメトリーを用いて、dUTPaseがEpCAM陽性細胞で強く発現していることを確認した。WntシグナルとdUTPase発現について検討した。Wntシグナルを活性化させたところ、肝癌培養細胞でdUTPaseの強発現を認めた。si-RNAを用いてβ-cateninの遺伝子発現を抑制したところ、controlに比べて明らかにdUTpaseプロモーターの活性の低下がみられ、dUTPaseの発現はWntシグナルで調節されている可能性を発見した。β-HIVSおよびその類似化合物一種類で、肝癌培養細胞でのEpCAM陽性細胞の減少を確認した。これらの研究により、dUTPaseとWnt/β-cateninシグナルおよびEpCAM発現との相関が明らかとなった。さらにdUTPase抑制薬候補として、β-HIVS類似化合物を同定した。
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Hepatology
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