研究課題
ヌードマウスを用いた卵巣癌細胞腹膜播種モデルにおけるFuEP2/Ex2の抑制効果メカニズムの精査を行った。腫瘍部の組織切片を用いた免疫組織染色によって、FuEP2/Ex2によって増殖が抑制された腫瘍片はCD31、CD163陽性細胞数が有意に減少していた。更に、FuEP2/Ex2発現細胞の培養上清中におけるVEGF、CXCL1、IL-6及びIL-8産生量が顕著に減少していた。以上から、FuEP2/Ex2によるPGE2受容体シグナリング阻害は腫瘍細胞のサイトカイン産生を抑制する事で腫瘍血管新生及び免疫抑制性マクロファージの集積を減少させるという腫瘍増殖抑制メカニズムの一端を明らかにする事ができた。腫瘍片から得たmRNAを用いて、cDNAマイクロアレイ解析を実施した。その結果、FuEP2/Ex2発現細胞由来の腫瘍片で明らかな発現上昇(cut off :4倍以上)が認められた遺伝子が6つ同定された。この中の3つ(MMP-7、TMPRSS4、CYP1B1)に着目し、それぞれに対する阻害剤及びsiRNA処理が腫瘍増殖に与える影響を検討した。その結果、TMPRSS4に対する阻害剤及びsiRNA処理がFuEP2/Ex2発現細胞の増殖を有意に抑制した。以上から、MMP-7、TMPRSS4、CYP1B1はFuEP2/Ex2によって増殖が阻害された腫瘍で生存因子として機能するため発現が上昇し、この内TMPRSS4を標的とした薬剤処理を行う事で一層の腫瘍退縮が期待できる事を示した。
2: おおむね順調に進展している
卵巣癌細胞腹膜播種モデルにおけるFuEP2/Ex2の抑制効果メカニズムの一端を示す事ができた。この結果は国際誌に投稿し、受理されている。また、膵臓癌細胞の同所移植モデルを用いた解析及び15-PGDHの癌細胞増殖抑制作用の解析も現在順調に遂行している。
研究計画は上記の通りおおむね順調に進展しているので、申請書に記してある計画にそって研究を遂行していく。なお、乳癌細胞の全身転移モデルを用いるにあたっては、本施設に導入されたバイオイメージング装置を駆使し、より詳細な解析を行っていく予定である。
次年度への繰越額は平成25年度研究実施計画における物品費の購入に充てる予定である。
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International Journal of Oncology
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