研究概要 |
膵臓癌細胞の同所移植腫瘍モデルを用いて、FuEP2/Ex2の膵内腫瘍増殖に対する影響を検討した。BxPC-3 (COX-2陽性、EP4強陽性)を用い、FuEP2/Ex2発現ベクターを導入後、薬剤選択を行い安定発現株を得た。この細胞をヌードマウス膵内に直接移植し、8週後の腫瘍重量を比較したが、FuEP2/Ex2の腫瘍増殖抑制作用は見られなかった。この点より、FuEP2/Ex2によるEP受容体シグナリング阻害が奏効しない種類の癌がある事が示された。 膵臓癌臨床検体においての15-PGDH発現の頻度を明らかにし、申請者がこれまでに示した膵臓癌細胞(COX-2、EP2/4陽性)での15-PGDH強制発現がもたらす細胞増殖能の減少、血清除去時の生存細胞数の減少、インスリン、EGFによる細胞増殖刺激に対する負の制御、TRAILによるアポトーシス誘導の増強が実際の膵臓癌で起こりえるかを検討した。現在、臨床検体のパラフィンブロックから薄切切片を作製し、COX-2、EP2/4、15-PGDHの免疫染色を行っているが、15-PGDHの特異性の高い染色像が得られる抗体または処理条件の決定に至っていない。今後も条件検討を継続し、目的の達成を目指していく。 14,15-EETをはじめとしたCYPによるアラキドン酸代謝物の癌細胞増殖に与える影響を検討した。まず、前立腺癌細胞株PC-3、DU145、LNCaP.FGC、膵臓癌細胞株MiaPaCa-2、BxPC-3、PANC-1を用い、Ebastine (CYP2J2阻害剤)、AUDA (EPHX2阻害剤)、14,15-EEZE (EET拮抗剤)の影響を検討した。その結果、Ebastine処理はPANC-1を除く全ての細胞株で顕著な生細胞数の減少をもたらした。そこで、DU145(皮下)とMiaPaCa-2(膵臓内)を用いた移植モデルにてEbastineの腫瘍増殖に与える影響を検討したが、有意な抑制効果は認められなかった。
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