研究課題/領域番号 |
24701029
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森田 和豊 九州大学, 大学病院, 特任助教 (00608862)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | microRNA / 肝細胞癌 |
研究概要 |
生体肝移植後肝細胞癌再発症例3例について、原発巣(T)、非癌部(N)、転移再発巣(M)から抽出したRNAを用いてマイクロアレイによるプロファイリングを行った。癌部/非癌部、肝癌原発巣/転移再発巣においてそれぞれ発現亢進しているmiR-18a, 発現低下しているmiR-199aを同定した。このmiR-18a, 199aについて肝細胞癌に対する生体肝移植症例70例について検討したところ、miR-18aは癌部で有意に発現亢進しており、非癌部では有意に発現低下していた。臨床病理学的因子との解析を行ったところ、miR-18a高発現群ではAFP, PIVKAが有意に高く、腫瘍径が有意に大きかった。miR-199a低発現群ではPIVKAが有意に高く、門脈侵襲が有意に高率であった。また、miR-18a高発現群、miR-199a低発現群はそれぞれ無再発生存が有意に不良であった。以上より、miR-18a, 199aが肝細胞癌に対する肝移植後の予後因子となりうる可能性、肝細胞癌の生物学的悪性度に関連している可能性が示唆された。miRNAの肝細胞癌における機能を確認するために肝癌細胞株を使用し、in vitroにて機能の解析を行った。肝癌細胞株にanti-miR-18aを導入してmiR-18aを抑制することで、増殖能・浸潤能が抑制された。肝癌細胞株にpre-miR-199aを導入してmiR-199aを強制発現させることで増殖能・浸潤能が抑制された。さらにmiRNAの標的遺伝子を検索し、ルシフェラーゼアッセイ、Western blotにてmiR-18aがTNFAIP3を、miR-199aがHIF1A, IGF1R, IGF2, VEGFAを標的遺伝子としていることを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞癌の進展に関与しているmiR-18a高発現とmiR1-99a低発現が実際に癌の増殖や浸潤に影響していることを確認すること、またそれぞれのmiRNAがどのような遺伝子を標的としているかを同定することは非常に重要と考えた。肝癌細胞株を使用し、in vitroにて機能の解析を行った。肝癌細胞株にanti-miR-18aを導入してmiR-18aを抑制することで、増殖能・浸潤能が抑制された。肝癌細胞株にpre-miR-199aを導入してmiR-199aを強制発現させることで増殖能・浸潤能が抑制された。オンラインデータベースを利用して、miR-18a, miR-199aの標的遺伝子を検索した。さらにmiRNAの標的遺伝子を検索し、ルシフェラーゼアッセイ、Western blotにてmiR-18aがTNFAIP3を、miR-199aがHIF1A, IGF1R, IGF2, VEGFAを標的遺伝子としていることを同定した。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルを用いた個体レベルでのアンチセンスRNA導入法の検討および治療効果判定を行う。8週齢のマウス右背部皮下に2.5x106個のマウス肝癌細胞を播種したマウス皮下肝癌モデルを作成する。アンチセンスRNAの導入法(アデノウイルスベクター、センダイウイルスベクター、PLL-g-Dex等)を検討し導入効率を定量する。miRNA抑制による肝癌の新規分子標的治療の開発を行うために、ターゲットmiRNAに対するアンチセンスRNAを導入し個体レベルでの抗腫瘍効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
生化学的試薬に約500,000円、培養用試薬に約500,000円、実験動物関連費に700,000円、国内出張旅費に約250,000円、外国出張旅費に約260,000円を使用する予定としている。
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