研究課題
本研究では、内分泌療法耐性乳がんにおける耐性獲得機序の分子生物学的解明と、診断・治療に向けた新たな分子標的の同定を目的とし、特に、エストロゲン応答遺伝子であり、乳がんの予後・内分泌療法効果予測に関わることを独自に明らかにしつつあるフォークヘッド転写因子FOXP1に着目し、クロマチン免疫沈降法と次世代シーケンサーを活用したゲノムワイドな結合領域の網羅的同定を行い、FOXP1の乳がんにおける標的遺伝子とERα/FOXA1転写調節ネットワークとの機能的関連、ERの転写に対する促進作用分子メカニズムの解明を行った。ERα陽性乳がん細胞株MCF-7細胞を対象に、エストロゲン刺激後のゲノムワイドなFOXP1結合領域を次世代シーケンサーにより網羅的に探索した結果、約4000カ所超の結合領域を同定した。これらFOXP1結合領域の大部分はFOXA1ならびにERα結合領域とオーバーラップしており、3者複合体が形成されていることが明らかになった。加えて、siRNAによるFOXP1のノックダウンにより、GREB1などのエストロゲン応答遺伝子の発現レベルが減弱し、FOXP1がERα/FOXA1転写調節ネットワークに対し重要な役割を担っていることを明らかにした。また、FOXP1により核内受容体ファミリーに属するSHP、LRH-1の転写が制御されていることを見出し、ERα陽性乳がんにおけるFOXP1標的遺伝子であることが示された。さらに、タモキシフェン治療乳がん臨床検体を用いた免疫組織学的検討から、FOXP1免疫反応性がERαならびにFOXA1免疫反応性と正の相関を示し、FOXP1・FOXA1の共陽性と無再発生存期間ならびに全生存期間との間に有意な正の相関関係があることを明らかにした。これらの結果から、FOXP1がFOXA1と共にタモキシフェン治療乳がんの予後良好性を規定する因子であることを解明した。
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Horm Cancer
巻: 3(4) ページ: 147-59
DOI:10.1007/s12672-012-0111-0
Cancer Science
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10.1111/j.1349-7006.2012.02201.x