研究課題/領域番号 |
24701040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 悠輔 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30378658)
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キーワード | 研究資源 / 研究倫理 / 医事法 |
研究概要 |
本研究は、従来のがん関連事業の経緯も踏まえつつ、既存試料を持続的な研究基盤として利活用するための欧米における法制度の再編・改革について、①北米・欧州圏における関連法規やガイドラインの検討、②運営関係者や有識者からのヒアリングを通して実証的に明らかにし、③各種の倫理問題や運営上の諸問題への対応について日本に示唆するものを得ることを目的とする。2年度目の平成25年度は、関連諸制度の内容分析、制度と実態との関係や格差についての観察研究、事例収集を当初の予定通り行うことができた。おりしもこの期間は世界医師会のヘルシンキ宣言の改訂、国内では研究倫理に関する行政ガイドライン(ゲノム指針)の改訂など、国内外でがん研究にとっても極めて重要な制度改革が進んだ時期であった。研究作業と国内外での論点との比較や、さらなる検討に関する見識を深める機会として活用することができ、関連テキストの作成のほか(医学のあゆみ 246巻8号, 545-551、Organ Biology,24-32)、最新の状況を踏まつつ概説的な研究発表を行うことができた(Science 341(6152), 1341-1342)。蓄積した試料をどう活用し、研究活動に展開していくかを考えるうえで、リソースの配分をめぐる重要な提言、とりわけリソース管理者の使命と責任のあり方をめぐる議論も提起でき、次年度の検討の土台をも構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2年度間では、①既存試料の再利用・転用に関する制度的要件の文献研究、および得られた知見について、ヒアリングや現地視察などの観察研究を通して、②制度と実態との関係や格差について、実証的に検討を行うことを主たる達成目標としてきた。国内外でがん研究にとっても極めて重要な制度改革が進んだ時期であった。研究作業と国内外での論点との比較や、さらなる検討に関する見識を深める機会として活用することができ、またテキスト作成や海外の有識者との連携も順調に進められ、上述のように国内外のジャーナルでの成果の公表も進みつつある。おりしもこのテーマは、現在の医科学政策の中で重要な課題テーマとなっており、その意味で本プロジェクトではタイムリーな話題でありつつ、次の項目で述べるように学術的にも検討すべき論点を特定することができ、次年度以降の検討作業にもつなげる意味でも実り多い年度であったと総括できる。
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今後の研究の推進方策 |
検討結果を踏まえ、レポジトリーの運営、既存試料の利活用における諸段階での課題や提言をまとめて成果として報告すること、実用的手順についてのプロダクトを作成することであり、学術的な発表と実務にも還元できる論点抽出を目標としている。これまでの法制度の内容分析に関する作業を基本的には継続しつつ、最終年度として、検討結果を踏まえた、がん研究資源の諸段階で直面する検討課題の特定とアプローチの仕方についての論点をまとめることに重点を置くことになる。また、今後の活動に繋がるよう随時関連リストの更新を続ける予定である。引き続き、動向に対応した検討と実務的な経験を活用しつつ、特に昨年度の検討の成果を踏まえた試料管理者が検討すべき職業倫理と資源の管理・配分への責任について、序説的な論点整理を行い、一段と加速化するバンク間のネットワーク化と研究活用の促進に対応した現代型の研究倫理を追究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張について先方との日程調整と関連して出席する予定であった学術集会の企画変更に応じて、出張を次年度に再設定することになった。研究計画全体への影響を過小にとどめるため研究手順の変更を検討して必要な物品の購入と活用で代用した結果、研究自体には大きな影響は発生しなかった。 上記の理由から、昨年度に支出する予定であった複数の国内外の出張旅費、アドバイザーへのヒアリングのための旅費に充てて研究計画の全体としての一体性を保つと共に(複数回、計40万円)、付随して発生する予定であった文献の購読、資料の整理やに充てることを予定している(上記を除いた残額)。本来予定していた次年度の予算額で直接経費70万円分については、引き続き、消耗品費としての文献(50万円)、その他、英文校正や他情報発信に要する費用(20万円)が計画進行の前提であり、それぞれの予定通りの配当を希望している。
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