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2012 年度 実施状況報告書

生存時間解析における樹木構造接近法によるがん患者の予後予測モデルの検討

研究課題

研究課題/領域番号 24701042
研究種目

若手研究(B)

研究機関地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所)

研究代表者

伊藤 ゆり  地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60585305)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード予後予測モデル / がん / 生存率 / 樹木構造接近法
研究概要

本研究はがん患者の診断・治療に関する腫瘍情報および生活習慣の情報をもとに、がん患者の予後予測モデルを作成することを目的としている。初年度は腫瘍情報を有する院内がん登録データベースと、がん患者の診断時(治療前)における生活習慣に関する調査のデータベースとをリンケージし、以前より用いられている統計手法(相対生存率モデル)を用いて、予後予測因子の洗い出しを行った。
また、共同研究者とともに、本研究における予後予測モデルに用いる生存時間解析における樹木構造接近法(Survival CART)に相対生存率の概念を組み込んだ方法論を開発した。共同研究者の作成した分析ツールを用いて、肺がん、食道がんデータへの適用を行った。分析に投入する変数の数は限られるため、どの変数を投入するかをあらかじめ検討する必要があり、また投入する変数の形式(連続値、カテゴリカルデータ)や、組み合わせにより、推定された最終の樹木が異なることがわかり、投入段階で変数間の競合関係などを検討しておく必要があることが示唆された。試行段階で推定された樹木では、手術の有無や進行度の影響が大きく、他の因子が残らないことがあり、層別分析の必要性が示唆された。
本研究は、最新の統計手法を現実の臨床データに適用し、臨床現場においても有用な予後予測モデルを作成することを目的としている。そのため、変数の選択や樹木の決定に際し、臨床医の意見を取り入れることで、実臨床で活用可能なモデルを作成できる。また、これまで臨床情報が少ないなどの理由で、十分に活用されてこなかった疾病登録資料を他のデータベースとのリンケージすることにより、患者や臨床現場に還元できる有用な情報活用ができることを示すことが可能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大阪府立成人病センター院内がん登録より2004-2007年診断患者の診断後3~5年の予後情報を得て、「健康と生活習慣」データベースとのリンケージを行った(胃がん624件、肺がん499件、大腸がん204件、食道がん226件)。上記データを用いて、相対生存率モデルによる単変量・多変量解析を行い、樹木構造に投入する変数の候補を検討した。分析に用いるデータの入手及びリンケージ、データクリーニングを研究期間前半に終了させたため、基礎的なデータ分析及び方法論の開発のためのサンプルデータセット作成が比較的早い段階で終了した。そのため、従来の生存解析で用いられる多変量解析モデル(相対生存率モデル)による変数の吟味を丁寧に行うことができた。
上記データのうち肺がん患者のデータをテストデータとし、研究協力者(弘前大学杉本知之准教授)の協力を得て、従来の生存時間解析に対する樹木構造接近法に相対生存率の概念を組み込んだ方法論を開発した。また、比較的欠損データの多い臨床データへの適用を検討するために、上記方法論に多重代入法も適用した。杉本氏の開発したその方法論を組み込んだソフトウェアを用いて、上記4部位についての樹木構造を推定する作業を行っている。特に手術の有無や進行度など強く相関する競合変数についての扱い方が課題となった。
開発した分析ツールを用いて、上記データのうち、肺がん、食道がんについて、樹木構造接近法を適用し、樹木はいくつか推定されたが、その臨床的意味を検討すること必要である。樹木構造接近法に投入する変数の検討にも臨床的観点を取り入れる必要があるため、研究協力者の臨床医の助言をもらいつつ試行錯誤を行っている段階である。また、院内がん登録資料および生活習慣アンケートの他に臨床データベースとのリンケージをすることで、より臨床応用可能な樹木を推定可能であることがわかった(食道がん)。

今後の研究の推進方策

平成24年度に検討した肺、食道での樹木構造接近法の適用において、課題となった投入変数の選定(競合変数の除去、変数の型)について、引き続き吟味する。また、予後情報が追加されたデータについて更新した上で、再度推定を行う。大腸、胃がんの他に、分析可能な部位をさらに選定し、適用する。これまでの検討で、症例数(イベント数)が少ない場合、樹木構造の推定に問題があること(樹木が分岐しないなど)がわかったため、樹木構造接近法の適用が可能な必要症例数およびイベント数を検討した上での部位の選定が必要である。
院内がん登録で利用可能な変数の他に、臨床上重要な変数についても検討を行う。大阪府立成人病センターの臨床医を中心に、各科の臨床データベースへの適用が可能であるか相談・依頼する。可能な部位、変数がある場合、これらのデータを院内がん登録資料および生活習慣アンケートをリンケージしたデータベースにさらに結合させ、より臨床像をとらえた樹木構造を推定する。
これまでに得られた研究成果を国内外の学会および学術誌に発表し、院内がん登録資料の有用性を周知する(日本癌学会、国際臨床生物統計学会等における発表、国際誌への投稿)。また、利用する院内がん登録資料を多施設に拡大するために、研究成果についての講習会あるいはホームページでの情報提供を行う(会議費用およびWebコンテンツ制作費用)。より大規模なデータでの予後予測モデルを再検討することを目的に、大阪府内のがん診療連携拠点病院への協力を依頼する予定である。

次年度の研究費の使用計画

樹木構造接近法の適用方法を検討する上で、さらなる分析ツールの改良などが必要であり、共同研究者の杉本氏との研究打ち合わせを年に2~3回、大阪・東京あるいは弘前で行う。移動をともなう分析環境であるため、持ち運び可能かつ高性能なノートパソコンを購入する必要がある。分析を行う上で必要な統計ソフトウェアも今年度購入する。
また、方法論の開発に関する研究結果の公表のために、8月にドイツで開催される国際学会(International Society for Clinical Biostatistics)に参加し発表する。肺がんデータの適用結果は10月に横浜で開催される日本癌学会において、発表する。
樹木の決定に際し、臨床的な意見をもらう上で、専門知識の提供に関する謝金や会議費用などが必要である。臨床データベースをリンケージすることになった場合にはデータクリーニングにかかる人件費等を支出する予定である。
研究成果の公表に際し、国際誌への投稿費用及び英文校正費用を使用する。また、研究成果を社会に還元するためのWebコンテンツ制作費用等も確保する必要がある。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] A Retrospective Study of the Novel Combination of Paclitaxel and S1 for Pretreated Advanced Non-Small Cell Lung Cancer.2013

    • 著者名/発表者名
      Aono N, Ito Y, Nishino K, Uchida J, Kumagai T, Akazawa Y, Okuyama T, Yoshinami T, Imamura F
    • 雑誌名

      Chemotherapy

      巻: 58 ページ: 454-460

    • DOI

      10.1159/000345624

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 子宮頸がん検診の無料クーポン券配布および未受診者への受診再勧奨の効果:コール・リコール制度の試み.2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤ゆり, 北尾淑恵, 中山富雄, 渋谷大助
    • 雑誌名

      公衆衛生

      巻: 76 ページ: 827-832

    • 査読あり
  • [雑誌論文] がん患者の治癒率とは?~がんの予後を示す新しい指標~2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤ゆり
    • 雑誌名

      成人病

      巻: 52 ページ: 21-22

  • [雑誌論文] Cancer incidence and mortality in Osaka, Japan: future trends estimation with an age-period-cohort model2012

    • 著者名/発表者名
      Utada M, Ohno Y, Shimizu S, Ito Y, Tsukuma H
    • 雑誌名

      Asian Pacific Journal of Cancer Prevention

      巻: 13 ページ: 3893-3898

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Trends in ‘Cure’ Fraction from Colorectal Cancer by Age and Tumour Stage Between 1975 and 2000, Using Population-based Data, Osaka, Japan2012

    • 著者名/発表者名
      Ito Y, Nakayama T, Miyashiro I, Sugimoto T, Ioka A, Tsukuma H, Abdel-Rahman ME, Rachet B
    • 雑誌名

      Jpn J Clin Oncol

      巻: 42 ページ: 974-983

    • DOI

      10.1093/jjco/hys132

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intralesional steroid injection to prevent stricture after endoscopic submucosal dissection for esophageal cancer: a controlled prospective study.2012

    • 著者名/発表者名
      Hanaoka N, Ishihara R, Takeuchi Y, Uedo N, Higashino K, Ohta T, Kanzaki H, Hanafusa M, Nagai K, Matsui F, Iishi H, Tatsuta M, Ito Y.
    • 雑誌名

      Endoscopy

      巻: 44 ページ: 1007-1011

    • DOI

      10.1055/s-0032-1310107

    • 査読あり
  • [学会発表] がん患者の生存率の社会経済因子による格差:大阪府がん登録資料による検討2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤ゆり, 中谷友樹, 中山富雄, 田淵貴大, 宮代勲, 井岡亜希子, 池田章子, 津熊秀明
    • 学会等名
      第23回日本疫学会学術総会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20130124-20130126
  • [学会発表] 市町村におけるがん検診精度管理指標の評価方法について ―Funnel Plotによる評価―2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤ゆり, 濱 秀聡, 池田章子, 中山富雄
    • 学会等名
      第71回日本公衆衛生学会総会
    • 発表場所
      山口
    • 年月日
      20121024-20121026
  • [学会発表] Conditional five-year relative survival for cancer survivors from 2000-2004 in Osaka, Japan, (がんX年サバイバーにおけるその後の5年相対生存率:2000-2004)2012

    • 著者名/発表者名
      Ito Y, Nakayama T, Miyashiro I, Tabuchi T, Ioka A, Tsukuma H
    • 学会等名
      71st Annual Meeting of the Japanese Cancer Association
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] Trends in ' Cure from Cancer in Osaka, Japan in 1975-2004: 13 Major Sites of Solid Tumour2012

    • 著者名/発表者名
      Ito Y, Nakayama T, Miyashiro I, Tsukuma H, Rachet B
    • 学会等名
      World Cancer Congress, UICC
    • 発表場所
      Montreal, Canada
    • 年月日
      20120826-20120830
  • [図書] がん統計白書(第3章 がんの罹患と死亡動向の府県別分析)2012

    • 著者名/発表者名
      井岡亜希子, 伊藤ゆり, 津熊秀明
    • 総ページ数
      18
    • 出版者
      篠原出版新社
  • [図書] がん統計白書(第9章 がん生存率の国際比較)2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤ゆり
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      篠原出版新社

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公開日: 2014-07-24  

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