研究課題/領域番号 |
24710001
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小笠原 敏記 岩手大学, 工学部, 准教授 (60374865)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 海氷 |
研究概要 |
冷凍室内に長さ17m,高さ1.2m,幅0.5mの造波水槽が設置された氷海-波浪水槽装置を用いて,-10度で冷却しながらプランジャー式造波装置によって周期波を発生させて海氷の生成実験を行った. 助成金で購入した高解像赤外線サーモグラフィを用いて,フラジルアイス/パンケーキアイスの生成過程における海氷面の温度を連続撮影し,それらのデータを画像解析した結果,水温‐2.2℃が海氷域の氷厚や塩分濃度の劇的な変化を引き起こす臨界温度と推察されることが明らかになった.さらに,グリースアイスでは,大気からの冷却作用が氷の下の海水に及び,海水中の水温低下によってフラジルアイスの生成を促進し,グリースアイスの堆積厚および塩分濃度の増加に結び付くことを明確にした. 一方,パンケーキアイスでは,パンケーキアイス同士の衝突によって,パンケーキ周縁部分にフラジルアイスが堆積することがわかった.その部分では,フラジルアイスが凝固するため,周縁部の表面温度が中心部分よりも高くなることが確認された.特に,海域に占める氷盤の面積率が40~60%を越えるようになると,冷却作用が氷盤に直接影響し,氷厚の成長よりも面積の拡大および氷盤の強度が増すようになることを示唆した. なお,本実験結果の信頼性を高め,パンケーキアイスの成長過程における熱交換メカニズムの解明および大気-海氷間の熱交換量の推定を図り,気候予測モデルへの適用を今後の課題と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラジルアイス/パンケーキアイスの生成過程における海氷面の温度を赤外線サーモグラフィにより計測し,その画像データを基に海氷の温度分布特性を明らかにして,その結果を査読論文として公表していることから,研究は概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
実験で得られた気温,水温,堆積厚(氷厚)および海面温度の各データを基に熱量を算出する.熱量は熱の移動を意味することから,その値が正の場合,大気から海氷面に熱を吸収し(吸熱),負の場合,海表面から大気に熱を放出している(発熱)と見なすことができ,その算出量から実海氷域における大気-海氷間の熱交換量の推定および将来予測を試みる. 特に,パンケーキアイスでは,その周縁部で熱交換が顕著であることが実験結果より明らかになって来たため,周縁部でどのような熱交換が行われているのか,そのメカニズムを解明すると共に,その熱量の推定を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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