研究課題/領域番号 |
24710003
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
峰島 知芳 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20550198)
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キーワード | 大気動態 / 酸素 / モニタリング / 大気輸送モデル / ソースレセプター解析 |
研究概要 |
本研究の目的は、風下での大気中O2/CO2変動比の観測値と、大気輸送モデルを用いて、東アジアに於ける使用化石燃料の推定を行うことである。その為に、後方粒子拡散型の大気輸送モデル(FLEXPART)の性能評価、モデルシミュレーションにインプットとして用いられるインベントリに基づいたCO2およびO2の発生量分布の作成、観測値とモデルシミュレーションの結果の比較に基づいた発生量分布の検証を行う。 これまでの成果としては、まず、東アジア地域の使用燃料内訳のデータを収集した。次に、燃焼に伴うO2とCO2交換比が、燃料の化学組成により異なるため、東アジア地域、得に中国のCO2、O2発生量分布図を省ごとの使用燃料種内訳より作成した。また、全球大気輸送モデル、FLEXPART、結合モデルを用いて、波照間島におけるCO2、O2濃度を計算し、O2/CO2比を再現するか検討した。そして、モデルの再現性が良く、または、悪くなる条件について詳細に解析した。また、鉛直混合スキームの異なるFLEXPARTモデルを用いて、シミュレーションを行い、比較を行った結果、鉛直混合スキームの違いはO2/CO2変動比の計算結果に大きな影響を与えていないことがわかった。また、逆推定法の習得を試みた。逆推定法とは、モデルシミュレーションと観測値の差が最少となるような発生量分布を推定する方法である。波照間島に於けるメタンの観測値とFLEXPARTモデル、オイラー型全球大気輸送モデルによるシミュレーション結果を比較して、東アジアに於けるメタン発生量分布の逆推定を行った。 今年度は、FLEXPARTモデルが、観測結果をより良く再現できる条件を解明する為、空間分解能の高い気象場を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
育児休暇取得の為、作業が遅延している。具体的には、FLEXPARTが観測値を再現する条件を気象場の解像度やフラックスを変更して検討する予定であったが、解像度の高い気象場を導入するに留まった。新しいフラックスを用いた解析はこれから行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、沖縄県波照間島におけるCO2、O2観測データを用いて、汚染イベント飛来時のO2/CO2変動比を比較することにより、FLEXPARTモデルの性能評価を行う。モデルの再現性は、フラックス分布、大気輸送スキーム、気象場に依存する。その為、まず、昨年度に引き続き、高分解能の気象場を用い、気象場がシミュレーション濃度、O2CO2比の再現性に与える影響を評価する。次に、フラックスについて比較を行う。フラックスは、ドイツ、マックスプランク研究所のGerbig教授と代表者が共著となっているCOFFEEデータセットを用いる。COFFEEデータセットは、昼夜変動、日々変動を取り入れたCO2、O2フラックス分布であり、これらを用いてシミュレーション結果を比較することにより、フラックスの昼夜変動、日変動によりシミュレーション結果に与える影響を評価することができる。三番目に、Gerbig教授、ユタ大学のJ. Lin教授が開発したラグランジュ型粒子拡散モデル(STILT)を用い、FLEXPARTと比較することにより、両モデルの特性を調べる。次に、これまでに習得した逆推定法を用い、東アジアにおけるO2フラックス分布図、O2/CO2分布図を推定する。逆推定法とは、モデルシミュレーションと観測値の差が最小となるようなフラックス分布を推定する方法である。 逆推定法を習得し、方法を確立した後は、その方法を用いて、O2フラックス分布、O2/CO2分布を推定する。推定したO2/CO2分布を用い、また、これまでに調査した使用燃料毎のO2/CO2交換比を用いて、東アジアの使用化石燃料分布について高精度で推定を試みる。 最後に、逆推定法で得られたO2フラックス分布、O2/CO2分布の妥当性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、育児休暇を取得したため、作業が遅延した。その為、プログラマーの人件費等の出費が滞った。 来年度は、主にプログラマーの人件費と、よりよい気象場の購入、国際学会の参加費、旅費に予算を使用する予定である。
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