研究課題/領域番号 |
24710004
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
橋濱 史典 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (80535807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒ酸塩 / リン酸塩 / 西部北太平洋 / 亜熱帯海域 / 高感度分析 |
研究概要 |
亜熱帯外洋域表層にはリン酸塩が極度に枯渇した領域が存在する。リン酸塩枯渇域ではヒ酸塩濃度がリン酸塩濃度よりも高くなる場合があり、一般的に毒性を有するヒ酸塩が微生物の同化を介して生物生産に影響を及ぼしている可能性が推察される。本研究では、西部北太平洋に広がるリン酸塩大規模枯渇域に着目し、物質循環におけるヒ酸塩の役割を高感度分析法を導入した現場観測により明らかにすることを目的とする。 平成24年度は、ナノモルレベルのヒ酸塩およびリン酸塩を高感度で同時分析するための吸光光度分析法を確立した。高感度化をはかるために、連続フロー型吸光光度分析装置の検出部に光路長1mのキャピラリーセルを組み込んだ。ヒ酸塩濃度は、常法であるリン酸塩測定のモリブデンブルー法に、発色温度37度、反応時間90分の条件を加え、還元試薬の添加の有無による吸光度の差から求めた。この際、還元試薬添加試料の吸光度からリン酸塩濃度も同時に求めた。予備検討実験から、還元試薬によるヒ酸塩の発色阻害は確認されたが、還元試薬自体がわずかに吸光度を上昇させたため、その値を補正する必要があった。本法によるヒ酸塩およびリン酸塩分析の検出限界はそれぞれ6nMおよび3nMであった。試料凍結によるヒ酸塩濃度への影響を調べたところ、凍結および未凍結試料の濃度に有意な差はなかった。 ヒ酸塩およびリン酸塩の高感度分析法を用いて、南北太平洋亜熱帯外洋域から採取した試料の測定を行った。表層混合層内のヒ酸塩およびリン酸塩は、それぞれ<6-32nMおよび<3-507nMの範囲で変動しており、リン酸塩が<10nMと枯渇していた西部北太平洋では広範においてヒ酸塩がリン酸塩よりも高濃度であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はヒ酸塩およびリン酸塩の高感度分析法の確立が主目的であった。実際に長光路キャピラリーセルを導入した吸光光度分析装置を組み上げ、ナノモルレベルのヒ酸塩およびリン酸塩の高感度分析を実現した。また、試料保存に関する検討から凍結保存が有効であることを明らかにした。これら分析法の確立に加え、現場海域で得られた試料の測定にも着手した。以上より、当初の計画通り、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、積極的に現場観測に参加し、平成24年度に確立した高感度分析法を駆使して、ヒ酸塩の空間分布および季節変化、ヒ酸塩添加に対する微生物群集の応答機構について明らかにする。特に、現場でのヒ酸塩添加培養実験に重点を置き、ヒ酸塩濃度およびヒ酸塩:リン酸塩濃度比の変化に対応した粒状物へのヒ素蓄積量、有機物生産量、微生物群集組成の変化について解析し、物質循環におけるヒ酸塩の役割について総合的に明らかにする。得られる成果は、学会発表および論文執筆を行い随時公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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