研究課題
亜熱帯外洋域表層にはリン酸塩が極度に枯渇した領域が存在する。リン酸塩枯渇域ではヒ酸塩濃度がリン酸塩濃度よりも高くなる場合があり、一般的に毒性を有するヒ酸塩が微生物の同化を介して生物生産に影響を及ぼしている可能性が推察される。本研究では、西部北太平洋に広がるリン酸塩大規模枯渇域に着目し、物質循環におけるヒ酸塩の役割を高感度分析法を導入した現場観測により明らかにすることを目的とする。平成26年度は、平成24-25年度に得られた現場観測データの解析を行うと共に、リン酸塩枯渇が顕著な夏季の西部北太平洋において現場観測を実施し、ヒ酸塩添加に対する微生物群集の応答機構について明らかにした。特に、異なるヒ酸塩濃度添加に対するヒ素同化、有機物生産量、微生物群集組成の変化に着目して解析したところ、夏季の西部北太平洋であっても、異なる濃度区における各パラメーターの明確な経時変化および区間での差は認められなかった。このことからリン酸塩が極度に枯渇した環境下であっても、環境中のヒ酸塩濃度に依存せず、微生物群集はヒ酸塩の毒性に対して強い耐性を持つことおよびヒ酸塩を同化して増殖するわけではないことが明らかとなった。また、夏季の西部北太平洋では表層の溶存有機態リン (DOP) および粒状ヒ素:粒状リン濃度比が冬季に比べて低かった。DOP濃度が低下した領域では顕著なアルカリフォスファターゼ活性が検出されており、夏季の群集はリン源としてDOPを利用していたと解釈される。夏季の粒状ヒ素:粒状リン濃度比の低下は、DOP利用によるヒ酸塩取り込みの抑制に起因すると考えられ、DOP利用がヒ酸塩による増殖阻害の緩和に寄与している可能性が示された
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Plankton and Benthos Research
巻: 10 ページ: 26-33
Deep-Sea Research Part I
巻: 90 ページ: 115-124
10.1016/j.dsr.2014.05.004
http://www.kaiyodai.ac.jp/kyoin/staff.html?ids=20