研究課題/領域番号 |
24710008
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
野口 克行 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20397839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 衛星観測 / 対流圏二酸化窒素 / 国際宇宙ステーション |
研究概要 |
まず、国際宇宙ステーション(ISS)を想定した差分吸収分光法(DOAS)による対流圏二酸化窒素(NO2)観測のフィージビリティ・スタディを実施した。大気放射伝達モデルを利用し、ISSに特有なジオメトリ(天底観測、並びに東西両方向45度からの斜め観測)を考慮した計3パターンについて放射輝度を計算した。次に、ランダムノイズを加えてDOASを適用し、NO2斜め気柱量を得た。最後に、仮定したNO2の高度分布に応じたエアマスファクター(AMF)を掛け、鉛直方向の気柱量とした。このような操作を多数回繰り返し、気柱量のばらつき(標準偏差)を導出誤差とした。計算の結果、対流圏NO2の観測誤差は、日中に小さく朝夕に大きくなり、また夏と冬とでは時刻により大小関係が変わることがわかった。また、今回仮定したモデル大気でのNO2気柱量は朝から夕に掛けて大きくなるが、この日変化を捉えるにはSN比が500程度必要なことがわかった。日中の極小値や朝夕に観測を行う場合は、更に1000以上が必要である。また、ジオメトリ毎に比較したところ、季節や時刻、それにエアロゾル量などによっては、天底観測よりも斜め方向を見た場合の方が誤差が小さくなると考えられるケースが見つかった。これは、観測アルゴリズムを考える上で重要な情報である。 次に、ISS観測における地表面反射率の天頂角・方位角依存性(BRDF)の影響を評価するために、経験的モデルとして実測データ(MODIS)を用いた代表値データセットを作成した。この代表的データセットを用いて、AMFによりBRDFの評価を行なった。その結果、従来用いられてきた等方拡散的な仮定のもとに得られるアルベド(LER)を用いるときと比べて、AMFの絶対値は大きく異なり得るものの、エアロゾル量によっては日内変化のパターンは大きく変わらない結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記述した計画通りに研究は進行しており、遅れを発生させるような問題点も生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フィージビリティ・スタディで得られた知見及び新たに導入した地表面BRDFによる効果を考慮し、従来行われてこなかったBRDFの考慮を含む新たな次世代衛星用アルゴリズムの開発を目指す。BRDFの影響については、AMFのシミュレーションにより必ずしも完全に角度依存性を考慮しなくとも、近似的に精度を向上させられる可能性が示唆されているため、アルゴリズム開発において特にこの点に着目する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.平成24年度未使用額が発生した状況 備品や旅費などの実際の使用額が、見積もり時よりも若干少なく済んだため、10万円程度の未使用金が発生した。 2.25年度新たに請求した研究費と合わせた使用計画 前年度のフィージビリティ・スタディで明らかになった問題点について、改めてドイツの共同研究者と議論する必要性が出てきたため、前年度の未使用金を併せてドイツ滞在費として使用する。また、成果発表を行うため、国際学会出席の旅費としても使用する。さらに、シミュレーションを実施するためのデータストレージ並びに計算機周辺機器購入のために消耗品費として使用する。
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