研究課題/領域番号 |
24710011
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
栗崎 弘輔 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70507839)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 古環境情報 / 炭素安定同位体比 / 同位体平衡 / 石筍 / 古植生 / 古気温 / 大気汚染 / 絶対年代 |
研究概要 |
本研究は古環境情報の解明に利用可能な陸域炭酸塩の炭素安定同位体比の同位体平衡時の分別定数の挙動を明らかとすることを目的としており、実際の自然環境(洞窟内)と実験室で実際に炭酸塩沈殿の生成を行うことで、同位体平衡の解明を行う。研究機関は2年間で、初年度に機材の洞内設置および試料合成を行い、2年目に採取した試料の解析および報告を行う。研究は現在研究実施計画通りに進んでおり、学会発表、および論文報告を行うためのデータの取得・解析を現在も進めている。 年度初めにすぐ必要な機材である洞内炭酸塩生成装置の購入・組立を行うことができた。研究計画段階より安価な機材を調達することができたため、研究成果をより確実に得ることができるよう、2台で予定していた実験を10台に拡大することとした。現地へ出張して作成した機材を設置を行った。本研究では洞内で長期間かけて沈殿する炭酸塩の再現実験を行う。現在も洞窟内にて炭酸塩の生成は順調に行われており、おおむね計画通りに進んでいる。また洞内での長期間の実験を待つ間に、実験室レベルでも再現可能な装置を組み立て、実際の洞内だけでなく研究室内でも確認実験を行っている。 また他の研究サイトの探索も行った。比較対象として山口県秋吉台の薬仙湧泉を有望な研究サイトして候補に挙げることができた。薬仙湧泉は強アルカリ性の湧泉であり、サンプリング調査を行い、平衡計算プログラムを開発してシミュレーションを行った結果、湧出点付近の同位体比平衡を本研究課題で得られた同位体分別定数を用いて解明することができた。この成果は来年度の地球化学会で報告する予定である。 コンピュータシミュレーション、現地で採取した試料を用いた実験および解析が進んでおり、一定の結果を得ることができた。洞内生成装置によるデータも合成・解析が行われている。今後も最大限の成果を得るため実験・解析を続けている状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた機材の購入も済ませる事ができ、必要な試薬の合成、機材の設置のための出張を行うことができた。また新たな研究サイトの探索も行うことができ、研究の裏付けとなるデータを収集することができた。新たな研究サイトの探索で同位体平衡モデルの対象となる地点を発見し、研究の裏付けとなる一定の成果を得ることができた。現在学会発表、論文報告のため準備を行っている。最終年度に向けて成果を挙げるべく研究を遂行中である。 研究の目的に挙げたように、本研究に必要な試料合成装置を組み立て、地権者の許可を得て洞内に設置を行うことができた。また確実に実験が行えるよう、装置を改良し複数個の実験を同時並行で行えるようにした。試料の生成には時間がかかるため、データの解析は翌年度以降の予定であったが、短期間の微小な合成量でも測定が可能となるよう実験系を改良し、データの予察を行っている。基礎的なデータは計画を前倒しして収集済みである。また洞内の沈殿生成物および沈殿を生じさせる母液の回収を行い解析を行った。研究データの裏付けのため自然試料との比較を行いながら、研究を遂行させている。 解析には年間平均値が必要であるため、平成25年3月現在の時点では一年分には期間が足りず、最終的な解析結果は出すことはできないが、現在までの推移を見積もると多少の季節変化は見られるものの連続的な結果が得られており、このまま研究を継続させても良好な結果が得られるものと期待される。 実施計画に挙げた計画内容に関して、上記のように計画通りに進行中である。機材の改良・コストダウンができたため、当初の計画段階より研究対象地点、研究内容の両方を増やす事ができた。また研究目的に挙げた測定項目に関しても順調に遂行している。より多くのより良い研究結果を得るためにも、次年度以降も継続して研究を発展させることを可能とさせた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて論文・学会発表を行うためのデータ解析を進める。特に炭酸塩生成装置による試料が数多く合成される予定であるので、遅滞なく同位体比分析を行い、データをまとめる予定である。 炭酸塩沈殿生成装置から得られる試料の合成が終了する予定である。速やかにデータ解析を行い、同位体比の分別定数に影響を与える因子の特定の解析を進める。現在同位体比解析に重要な要因は試料生成の際の母液の供給速度であることを、本研究課題で開発した平衡計算ソフトにより明らかとした。現在洞窟内で行っているオンサイトでの測定結果と照らし合わせて作業仮説の確認を行い、平成25年度の地球化学会年会等で報告を行う予定である。25年度中の成果報告のため、ターゲットを絞って実験・解析を進める。 また定期的なサンプリング・メンテナンスに合わせて、新規研究サイトで試料採取・継続的な観察を行い、得られた研究結果の裏付けとなるデータ取得を行う。特に自然界ではpH 12を越える珍しい高アルカリ性湧泉水の出る研究サイトを研究対象とすることが出来た。さらに研究を進めるに当たって、現地の土地利用者から問題の無いよう了承を得る事が出来たため、来年度試料採取、データ解析を急ぐ。 上記の通り現在までのところ実施計画通りの結果が得られている。また研究の一部は前倒しして成果を得ることができた。結果についての予察が行えたため、研究対象を絞って解析を進める。今後も現地での定期的なサンプリングおよび機材のメンテナンスを行い、同位体比平衡解析に必要なデータの回収を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実施計画書通りに研究が進んでおり、次年度も引き続き現地でのサンプリング及び同位体比分析を行うため、主として出張費と同位体比測定費が必要となる予定である。特に平成25年度に集中して試料が合成されるため、試料回収および同位体比の測定に研究費を使用させて頂く予定である。その他実験室でも再現実験を行っているため、機材、試薬代が必要である。また同位体平衡の実験は温度に大きな影響を受けるため、夏の気温上昇の対策のため冷却器の修繕・改良を行う予定である。 幸い昨年度の機材の改良・コストダウンに成功したため、6万円強次年度に引き継ぐことができた。試料数が多く同位体測定費がかかるため、コストダウンで得られた研究費を当てて有効に活用したい。 研究は予定通り進んでいるため、申請した計画通りの研究費(消耗品費、試料回収のための出張費、同位体比測定費)が必要となる予定である。そのほか研究結果の報告のため、学会への出張費等がかかる予定である。 申請した研究計画以上の結果を得るため、研究に支障が出ない程度に出張費、同位体比分析費、機材・試薬代等を押さえつつ、新たな研究サイトの開発、拡充した研究の遂行に注力し、効率よく結果を残せるよう研究費を有効に活用する予定である。
|