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2012 年度 実施状況報告書

新規な二重標識トレーサー法による硝化細菌が持つ2つのN2O生成経路の分別定量

研究課題

研究課題/領域番号 24710012
研究種目

若手研究(B)

研究機関中央大学

研究代表者

勝山 千恵  中央大学, 理工学部, 助教 (10580061)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード安定同位体トレーサー / アンモニア酸化細菌 / 亜酸化窒素 / 硝化 / 脱窒 / 窒素循環 / 温室効果ガス
研究概要

アンモニア酸化細菌は温室効果ガスおよびオゾン層破壊ガスである亜酸化窒素(N2O)を生成し、2つの異なる生成経路を持つ。しかし、これらを明確に分別して定量できる方法がなく、それぞれの寄与は不明であり、N2O発生を抑制するための操作因子を割り出すことは難しい。本研究では、申請者らが改良したガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)と2種類の安定同位体15N, 18Oを用いて、アンモニア酸化からのN2Oと硝化菌脱窒からのN2Oを精確に分別定量する簡便な新しい方法(二重標識トレーサー法)を確立し、純粋培養アンモニア酸化細菌やモデル実験系(廃水処理系)を用いて2つの経路の寄与を明らかにすることを目的とする。
平成24年度は、N2Oの発生源特定に必須なN標識位置の分析技術(N2Oのフラグメント解析)を開発した。まず、化学的に亜硝酸塩(NO2-)からN2Oに変換するアザイド法により片側15N標識ガス14N-15N-Oの再現性の良い調製条件を設定した。調製したN2Oガスを用いて、15N標識位置の計算に必要なN2Oのフラグメント効率の値を調べた。次に、当研究室が純粋分離し、全ゲノム解読済みのNitrosomonas sp. AL212および標準株N. europaea ATCC 25978を用い、NH4+もしくはNH2OHと15NO2-を組み合わせた好気培養において生成されるN2Oの15N標識率と15N標識位置を求めた。その結果、アンモニア酸化および硝化菌脱窒由来のN2Oが検出され、NH2OHとNO2-からは一原子ずつNを使用してN2Oが生成されることが新たに明らかになった。N2O生成経路の寄与率は、種によって異なることが示された。さらに、18Oを用いた培養実験を開始し、NH2OHとNO2-からのN2O生成経路においてO原子が水もしくは分子状酸素からNO2-に入り込むことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

15N標識トレーサーを用いたN2OのN標識位置の分析技術の確立は、おおむね順調に進んでいる。また、平成25年度の予定であるアンモニア酸化細菌の培養株を用いたN2O発生特性の実験を15N標識トレーサーについて始めており、一部はすでに国際学会にて発表した。一方、18Oを利用したN2Oの分析法についてはまだ確立していないが、二重標識したNO2-を用いて培養実験を行い、N2Oにどのように18Oが入り込むのかを調べた。18O分析については反応中に水もしくは分子状酸素からO原子が入り込むため、より精密な解析が必要である。今後これらの解析をさらに進展させる。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、継続して15N, 18O二重標識トレーサー法を開発する。特に18Oを含めたN2Oフラグメント解析を確立する。まず、18Oで標識されたH2O および15N標識されたNO2-からMcIlvin & Casciotti (Anal. Chem. 2006) の方法によって15N,18O標識のN2Oを調製する。平成24年度に求めたN2Oのフラグメント効率を基に、15N18O+をはじめとするフラグメントイオンを定量し、15N,18O二重標識のN2O測定法を確立する。
次に、確立した方法を実際の菌株に適用し、アンモニア酸化細菌のN2O生成経路の分別定量を行う。NH4+, NH2OH, NO2-, H2Oの15N,18O標識試薬を組み合わせ、生成されるN2Oの15N,18O標識率と標識位置からN2O生成メカニズムを明らかにする。15N,18O二重標識により15N,18Oを同時にGC/MSで検出できることが、迅速で精確な測定を可能にする。N2Oフラグメントの組成から、N2O生成へのアンモニア酸化と硝化菌脱窒の寄与率を定量し、今まで過小評価していると思われる環境における硝化菌脱窒の寄与をどの程度見積もる必要があるのかを示す。代表的なアンモニア酸化細菌の複数種でN2O生成経路を比較する。
さらに、モデル実験系として複数種のアンモニア酸化細菌が集積された実際の廃水処理系の試料を用い、実際に生成されるN2Oを本研究で確立した方法により解析し、アンモニア酸化と硝化菌脱窒のN2O生成への各寄与率を見積もる。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の当初予定よりも安定同位体(15N,18O)標識試薬の購入費が少なく済み、約20万円の予算を平成25年度へ繰り越す。平成25年度は15N,18O標識試薬を用いたアンモニア酸化細菌の培養実験をより頻繁に行うため、そのための15N,18O標識試薬、培養用試薬、GC/MS消耗品を中心とする消耗品費を使用する。また、開発した手法を環境試料におけるN2O発生由来の検証へも応用するため、フィールド調査交通費を国内旅費として含める。外国旅費として、アンモニア酸化細菌のゲノムから酵素および反応経路の最新知見に精通する研究者をUSAから一名招聘し、議論を行う。加えて、成果をまとめ、論文発表するため、英文校閲料や投稿料を使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Evidence of hybrid N2O production from NH2OH and NO2- in cell suspension of oligotrophic ammonia-oxidizing bacterial strain Nitrosomonas sp. AL212 using a 15N and 18O tracer technique

    • 著者名/発表者名
      Chie Katsuyama, Keisuke Koba, Yuichi Suwa
    • 学会等名
      第14回国際微生物生態学シンポジウム(ISME14)
    • 発表場所
      コペンハーゲン市(デンマーク王国)
  • [学会発表] 森林生態系の地下水帯における亜酸化窒素の発生と消費メカニズムの解明に向けた安定同位体の利用

    • 著者名/発表者名
      勝山千恵, 大手信人, 加藤憲二, 諏訪裕一
    • 学会等名
      第28回日本微生物生態学会大会
    • 発表場所
      豊橋技術科学大学(愛知県)

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公開日: 2014-07-24  

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