今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、継続して15N, 18O二重標識トレーサー法を開発する。特に18Oを含めたN2Oフラグメント解析を確立する。まず、18Oで標識されたH2O および15N標識されたNO2-からMcIlvin & Casciotti (Anal. Chem. 2006) の方法によって15N,18O標識のN2Oを調製する。平成24年度に求めたN2Oのフラグメント効率を基に、15N18O+をはじめとするフラグメントイオンを定量し、15N,18O二重標識のN2O測定法を確立する。 次に、確立した方法を実際の菌株に適用し、アンモニア酸化細菌のN2O生成経路の分別定量を行う。NH4+, NH2OH, NO2-, H2Oの15N,18O標識試薬を組み合わせ、生成されるN2Oの15N,18O標識率と標識位置からN2O生成メカニズムを明らかにする。15N,18O二重標識により15N,18Oを同時にGC/MSで検出できることが、迅速で精確な測定を可能にする。N2Oフラグメントの組成から、N2O生成へのアンモニア酸化と硝化菌脱窒の寄与率を定量し、今まで過小評価していると思われる環境における硝化菌脱窒の寄与をどの程度見積もる必要があるのかを示す。代表的なアンモニア酸化細菌の複数種でN2O生成経路を比較する。 さらに、モデル実験系として複数種のアンモニア酸化細菌が集積された実際の廃水処理系の試料を用い、実際に生成されるN2Oを本研究で確立した方法により解析し、アンモニア酸化と硝化菌脱窒のN2O生成への各寄与率を見積もる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の当初予定よりも安定同位体(15N,18O)標識試薬の購入費が少なく済み、約20万円の予算を平成25年度へ繰り越す。平成25年度は15N,18O標識試薬を用いたアンモニア酸化細菌の培養実験をより頻繁に行うため、そのための15N,18O標識試薬、培養用試薬、GC/MS消耗品を中心とする消耗品費を使用する。また、開発した手法を環境試料におけるN2O発生由来の検証へも応用するため、フィールド調査交通費を国内旅費として含める。外国旅費として、アンモニア酸化細菌のゲノムから酵素および反応経路の最新知見に精通する研究者をUSAから一名招聘し、議論を行う。加えて、成果をまとめ、論文発表するため、英文校閲料や投稿料を使用する。
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