研究課題/領域番号 |
24710015
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研究機関 | 公益財団法人レーザー技術総合研究所 |
研究代表者 |
櫻井 俊光 公益財団法人レーザー技術総合研究所, レーザープロセス研究チーム, 研究員 (00581810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 氷コア / 塩微粒子 / レーザー分光 / レーザー応用 / 水溶液 |
研究概要 |
本研究は、極地氷床コアに含まれる水溶性エアロゾルの微量含有物を高感度で分析する技術開発を行っている。パルスレーザーを利用することで、非線形光学過程などを利用した分光が可能である。本年度は以下の研究を実施した。 1.SRS-LIBS計測システムを考案した。これまでの氷床コア解析では、氷床コアに含まれる微粒子などの化学組成と元素組成を同時に計測することは困難であった。本システムでは、液中に含まれる不純物をSRSで化学組成、LIBSで元素組成を同時に計測することが可能であることを示した。NaCl水溶液に含まれるO-H伸縮振動とNa+(D線)を同時に計測することに成功した。また、硝酸塩水溶液からは、N-O伸縮振動と考えられるSRSスペクトルが得られた。氷床コアを解析するにあたり有力な計測手法になる可能性がある。 2.氷床深部に存在する水溶液の分布について、ラマン分光法で明らかにしてきた。さらに、計算によって氷床深部に存在する水溶液の分布について新しい知見が得られた。これまで言われていた氷内水溶液の分布とは異なり、ラマン分光法で得られた計測結果と相違ないものであった。 3.パルスレーザーを水溶液に照射した。水溶液の濃度変化によるSRSスペクトルの変化を解析し、水溶液中に含まれる水分子の挙動に関する知見が得られた。また、1パルスごとに得られるSRSスペクトルを現在解析中である。 4.レーザーで氷を融解する手法を考案した。氷コア解析では常にコンタミネーションの問題と背中合わせである。レーザーで氷を融かせばコンタミネーションの心配はなくなる点で本手法の利点があり、その融解特性について評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画の通り、パルスレーザーを利用した分光計測の手法を提案している。さらに、本研究はレーザー分光だけでなく、レーザーで氷を融解させることにより、コンタミの影響を気にする必要のない手法を提案している。これは、氷コア解析には画期的な方法であり、氷床深部に存在する微粒子やごく微量に含まれる不純物分析などへの応用が期待できる。たとえば、氷床コア深部などでは微粒子がごく一部に集まっている可能性があり、氷コア内におけるそれらの空間分布を知るために、有力な手法となる。 非線形光学過程を利用したレーザーの分光法について提案している。たとえば、LIBS - SRS計測では、氷床内に含まれる微粒子の化学組成だけでなく元素組成も明らかになる利点があり、これまでにラマン散乱だけでは得られなかった、「元素」の情報も得られることが期待できる。また、水溶液中に含まれる水分子の挙動に関する知見がSRS計測によって得られた。氷コア研究だけでなく水の構造に関する知見が得られる可能性があり、他分野への波及性が高いものと考えている。 以上のことから、当初の計画以上に研究内容が豊富になり、これからを論文として発表していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記課題はすべて常温で対象物を計測した成果である。今後は、低温冷却装置を利用した計測を行う予定である。また、結果をまとめて論文発表を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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