研究課題/領域番号 |
24710017
|
研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
伏見 暁洋 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (30391155)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 農作物残渣 / 野焼き / 稲わら / PM2.5 / 大気 / 微小粒子 / 有機指標成分 / 化学組成 |
研究概要 |
稲わらなど農作物残渣の屋外焼却(野焼き)が大気環境(微小粒子濃度)に与える影響を定量的に評価するため,以下の研究を行った。 1.野焼きなど各種発生源の指標となる有機指標成分の測定法を確立するため,稲わら等のバイオマス燃焼の指標となるレボグルコサンをはじめ,17種の発生源の指標となり得る35成分を対象に,標準物質を誘導体化した場合,しない場合の各々についてGC/MSで測定し,クロマトグラム形状や強度等を確認した。種々の試薬を用いて誘導体化の検討を行った結果,BSTFA(N,O-Bis(Trimethylsilyl)Trifluoroacetamide)とTMCS(Trimethylchlorosilane)によって,大半の対象成分をうまく誘導体化できることが明らかになった。 2.大気微小粒子(PM2.5)への野焼きの影響を把握するため,関東郊外(つくば市,国立環境研究所)でPM2.5を2012年7月以降,毎週採取した。 3.つくば市内(国立環境研究所周辺)の水田エリアを2箇所選定し,1~2週間おきに現地を視察し,農作物(特に水稲)の作付けの様子や野焼きの実態(場所,広さ,残渣種類,時期,期間,焼却率,焼却方法等)を調査した。 4.国産の稲わら,小麦わら,大麦わら,籾殻,小豆茎葉を対象に,現場を模擬した野焼き実験により採取した粒子試料について,秤量による粒子重量,光学補正・熱分離炭素分析計による炭素成分(元素状炭素EC,有機炭素OC),PIXE (Particle Induced X-ray Emission)法による元素分析,イオンクロマトグラフィーによるイオン成分の測定を行い,残渣の種類や燃焼条件による排出係数や組成の違いを明らかにした。国産穀物の排出係数データは非常に少なく,これだけ多くの成分を測定したのは本研究が初めてであり,籾殻の組成は世界初のデータである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記項目2,3,4に関しては計画通り実施でき,特に項目4の野焼き実験による粒子組成に関しては良いデータがとれた。ただし,項目1の有機指標成分の測定法確立については,標準試薬による検討に留まっており,手法を確立するところまでは至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
1.野焼き実験で採取した試料について,誘導体化GC/MSにより有機指標成分を測定し,残渣の種類や燃焼条件によるレボグルコサンの排出係数の違いを明らかにする。 2.つくばでの大気中微小粒子の採取,野焼き実態の調査を8月頃まで継続する。 3.つくばで採取した大気微小粒子中のEC/OCとレボグルコサンを測定する。 4.野焼き実験で求めた微小粒子の排出係数から,既存の排出係数の妥当性を評価する。また,国内における野焼き粒子の成分別排出係数の特徴を明らかにする。 5.野焼き実態調査に基づき,既存の排出インベントリーで用いられている燃焼率などの活動量の妥当性を確認するなど,既存の排出インベントリーの妥当性を検証する。 6.最近のヘリウムガスの供給不足に対応するため,ヘリウム以外のガスをキャリアーガスに用いた炭素分析の可能性を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
大気試料採取のためのフィルター等の消耗品,GC/MS分析や炭素分析にかかるガスや試薬・有機溶媒等の消耗品の購入に約70万円をあてる。当課題の成果発表のための学会(大気環境学会)参加のために,約9万円を使用する。野焼き実験の成果を論文化する際の英文校閲費として約10万円を使用する。
|