稲わらなど農作物残渣の屋外焼却(野焼き)が大気中の微小粒子(PM2.5)濃度に与える影響を定量的に評価するため,以下の研究を行った。 (1)野焼きの指標となるレボグルコサンを含む有機指標成分6種を対象に,BSTFAとTMCSを用いた誘導体化GC/MSによる測定法を検討し,レボグルコサンを精度よく測定できることが確認できた。同法により,関東地方で夏季と冬季に採取した大気微小粒子を測定した結果,レボグルコサンの大気中濃度は他の成分より高く,3.2~440 ng/m3であった。(2)PM2.5への野焼きの影響を把握するため,関東郊外(つくば市)で,1年余(2012年7月11日~2013年8月27日),毎週ハイボリウムサンプラーによりPM2.5試料を採取し,秤量による粒子重量,光学補正・熱分離炭素分析計による炭素成分(元素状炭素,有機炭素)分析を行った。(3)つくば市内の水田エリア2箇所を1~2週間おきに視察し,農作物(特に水稲)の作付けの様子や野焼きの実態(場所,広さ,残渣種類,時期,期間,焼却率,焼却方法等)を調査した。(4)国産の稲わら,小麦わら,大麦わら,籾殻,小豆茎葉を対象に,現場を模擬した野焼き実験により採取した粒子試料について,粒子重量,炭素成分,元素,イオンを測定し,残渣の種類や燃焼条件,含水率による排出係数や組成の違いを明らかにした。国産穀物の排出係数データは非常に少なく,これだけ多くの成分を測定したのは本研究が初めてであり,籾殻の組成は世界初のデータである。(5)最近のヘリウムガスの供給不足に対応するため,窒素をキャリアーガスに用いた炭素分析の可能性を大気試料など約20試料を対象に検討した。その結果,低濃度域ではやや値が異なるものの,窒素を用いてもヘリウムの場合と同等の測定結果が得られることを確認できた
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