研究課題/領域番号 |
24710018
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 彌生子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品分析研究領域, 研究員 (00515059)
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キーワード | 安定同位体比 / 微量元素組成 / ワカメ |
研究概要 |
震災後の2012年に収集したワカメ試料について、安定同位体比分析および微量元素分析を行った。試料は、三陸・鳴門・中国および韓国において、2012年に素姓の明確な試料を採取した。各検体は、昨年度と同様にオーブンにて乾燥後、ミルにて粉砕し、元素分析計‐質量分析計(EA-IRMS)を用いて炭素・窒素同位体比を測定した。また、粉砕試料をマイクロウェブにより湿式分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて、12元素(Mg・P・Ca・V・Mn・Fe・Zn・As・Rb・Sr・Cd・Ba)を測定した。 2011年・2012年ともに、全てのワカメ試料において、炭素・窒素同位体比に大きな変動は見られなかった。2011年と同様に2012年についても、鳴門産の窒素同位体比は有意に高い傾向が得られた。瀬戸内海へ流入する陸域からの人間活動由来有機物が海域の食物連鎖に大きく寄与していると示唆される。2011年および2012年産のワカメについて12元素の組成を比較した。2011年および2012年に共通して、三陸産は全体的に他の地域よりも濃度が低く、鳴門産はMg濃度が比較的低く、中国産はBa濃度が比較的高く、韓国産はVおよびRb濃度が比較的高い特徴を持つことが分かった。ワカメは葉体で栄養分の吸収などを行うため、葉体中の微量元素組成は海水中の成分を反映していると考えられる。陸域からの流入に伴い、沿岸部では湾の環境特性が見られると考えられる。ワカメにおいても各湾に流入する成分の違いなども含めて生育環境の海水中の微量元素組成が異なることを反映していると考えられる。一部の元素では、年次変化による微量元素濃度の変動が見られたが、安定同位体比および微量元素組成の結果を組み合わせて判別分析した結果を、震災前の2011年と震災後の2012年で比較すると、三陸・鳴門・中国および韓国の4群に分かれ、震災前後で大きな変動は見られなかった。引き続き2013年の試料を含めて3年間での年次変動を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画としては、(1)三陸・鳴門を中心とする浜単位で素姓の明確な試料の収集、(2)震災後試料の安定同位体比および微量元素組成分析、(3)データの数理解析について挙げていた。震災後の2012年に三陸・鳴門・中国・韓国で収穫された試料についても、試料収集および安定同位体比分析・微量元素組成分析が完了し、震災前後での年変動も含め、データ解析を行い、国際学会にて発表を行った。2013年度の試料収集も完了しており、安定同位体比分析・微量元素組成分析を進めている。以上より、全体を通して、計画通りに進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の計画としては、当初の計画通り、(1)震災後試料の安定同位体比および微量元素組成分析(3)データの数理解析(震災前と震災後の計3 年間の経年変化を追跡)について研究を進める。引き続き、経年変化を検証するために収集済みである2013年の素姓の明確な試料について炭素・窒素同位体比および微量元素組成分析を行う。年次間差を調べるためには、2 年間の結果だけでは通常とは異なって、たまたま大きく変動したり、違いが出なかったりすることがあり得ることから、最低でも3 年間は必要である。震災前の2011年と震災後の2012年については分析済みであり、来年度は3年目の傾向として、2013年の試料を分析し、結果をまとめ、震災前後での3年間の年次変動を検証する。
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