研究課題/領域番号 |
24710019
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
研究代表者 |
中澤 文男 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (80432178)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 氷河 / 花粉 / DNA / アイスコア / ロシア / アルタイ山脈 |
研究概要 |
本研究ではこれまで、ロシア・アルタイ山脈の氷河試料に含まれるマツ属花粉をもちいて研究を進めてきた。マツ属の下位の階級には、2亜属、4節、17亜節、約111種が存在する。これまでの研究成果として、マルチプレックスPCR法を採用し、亜節レベルでの同定が可能になったことが挙げられる。塩基配列の取得率は暫定的な値であるが約45%に達し、先行研究のそれを大きく凌ぐ結果が得られている。また興味深いことに、氷河周辺に分布するシベリアマツ(Pinus sibirica)と同節であるQuinquefoliae節のほかに、北米にのみ分布するAustrales亜節や、カナリア諸島・地中海・ヒマラヤにのみ生息するPinaster亜節に同定される花粉も見つかった。これらの亜節に属する花粉は、偏西風により長距離輸送されたものであると考えられる。従って、氷河中のマツ属花粉は近距離輸送のものと長距離輸送のものが混在していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は全ゲノム増幅法を取り入れた手法開発に着手したが、現時点で増幅成功には至っていない。このことが研究の進捗を妨げる要因となっている。本年度は、様々なメーカーから発売されている全ゲノム増幅用の試薬を説明書通りにおこないテストしてきた。本研究で扱う材料は、花粉1粒ずつからの微量DNAであり、かつ氷河中に長時間保存されていた古いDNAであるため、反応条件を最適化する必要があると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
全ゲノム増幅法による花粉DNAの増幅は、本研究の可能性を最大限に引き出すものである。そのため、全ゲノム増幅反応の条件検討にもう少し時間を割く予定である。万が一うまくいかない場合も考慮し、既に開発済みであるマルチプレックスPCR法による、より多くの塩基配列データの取得も目指す。開発した分析手法をもちいて、アイスコア中のマツ属とカバノキ属の花粉DNA 分析に着手する。そして、過去数千年間に渡るマツ属とカバノキ属の種の変遷を明らかにする。本研究で復元された植生変遷史と、他の解析から既に復元されている気候・環境情報を比較し、その関係について議論する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用するアイスコアは既に保有している。また、本研究で使用する分析機器類に関してもすべて所有している。そこで、研究費はおもに以下の用途に使用する。 <物品費> 本研究では数多くの試料を処理する必要があるため、DNA 分析用の試薬類・チップ等プラスチック製消耗品の購入に使用する。 <旅費> 研究成果を学会で発表するために、国内旅費として使用する。 <人件費> DNA分析では多くのルーチンワークが必要であり、且つ本研究で扱う試料数は非常に多いので、研究のスピードアップを図る目的で実験補佐員の雇用に使用する。
|