WGA法による氷河中のマツ属花粉1粒ずつの全ゲノム増幅に成功した。マツ属の下位の階級には、2亜属、4節、17亜節、約111種が存在する。そのうち、ベルーハ氷河周辺にはシベリアマツとヨーロッパアカマツが分布する。本研究で同定されたマツ種は、シベリアマツ(Pinus sibirica)であったことから、開発した手法の正確性を確認することができた。アイスコアの深度の異なる花粉試料をDNA分析した結果、WGA反応の成功率が大きく異なることが分かった。そしてそれは花粉の古さではなく、氷河堆積後の保存条件によると考えられた。本研究では、過去100年間のマツ属花粉試料についてDNA分析を試みた。そしてそのほとんどは、シベリアマツ、もしくはシベリアマツが属するStrobus亜節と同定された。従って、過去100年間のマツ属の優占種はシベリアマツであったと考えられた。今後、さらに古い年代の花粉試料についてもDNA分析を実施していく予定である。
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