研究課題/領域番号 |
24710021
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
永井 信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 技術研究副主任 (70452167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 衛星リモートセンシング観測 / 地上検証観測 / 分光植生指数 / 生態変化 / 落葉広葉樹林 / 常緑広葉樹林 / フェノロジー(生物季節)画像 / 分光放射測定 |
研究概要 |
衛星リモートセンシング観測で得た分光植生指数により、広葉樹林の動態を高精度に評価することを目的に、マレーシアの常緑広葉樹林(ランビルヒルズサイト)と日本の落葉広葉樹林(高山サイト)において、統合的な地上検証観測を行い、リモートセンシングデータと生態現象との対応関係を調査した。本年度は、ランビルヒルズサイトにおいて、衛星観測時の雲被覆を調査するために自動撮像型カメラシステムを、可視赤と近赤外の分光反射特性を観測するために光量子センサーを新設し観測を開始した。既存の自動観測機器と併せて、両広葉樹林サイトにおいて、分光植生指数(NDVI)・森林全体及び樹種毎のフェノロジー(生物季節)画像・天空画像が毎日取得された。また、高山サイトにおいて、葉の形質情報(大きさ・枚数・SPADクロロフィル・角度分布)の季節変化が取得された。Terra/Aqua MODIS衛星で観測された毎日の分光反射率データを収集し、分光植生指数により、日本とボルネオにおける植生の時空間分布の変動を図化した。 以上の地上及び衛星観測データの解析の結果、以下の3項を明らかにした。 (1)毎日のフェノロジー画像から抽出したRGB(赤・緑・青のデジタルナンバー)値は、季節変化が乏しく、樹種毎の特異性がみられる常緑広葉樹林でさえも、樹種ごと又は森林全体の生態変化(展葉、紅葉や落葉)を検出可能であること。(2)これに対して、森林上部における分光反射率データは、樹種毎に異なる、紅葉や落葉のパターンやタイミングの空間分布の平均をとらえていること。そして、(3)前述(2)に関連し、NDVIやEVIと比べて、GRVIは、落葉のタイミングの経年変化を高精度に検出可能であることである。 以上の結果は、国内外の研究集会にて発表され、国際的な学術誌へ投稿準備中である。常緑広葉樹林における生態変化を毎日の時間軸で明らかにしたことは特筆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マレーシアの常緑広葉樹林(ランビルヒルズサイト)と日本の落葉広葉樹林(高山サイト)において、新設及び既存の観測機器により、自動観測データを計画通りに取得できた。ランビルヒルズサイトでは、観測クレーンの修繕・トラブル等により、葉の形質情報を1回しか取得できない不測の事態に見舞われたが、高山サイトでは、葉の形質情報の季節変化を計画通りに取得できた。平成24年度を含め、現在までに得た長期連続的な自動観測データ及び人間による定期的な生態観測データを用いて、衛星及び近接リモートセンシング観測値と生態現象との対応関係を毎日の時間軸で調査できた。平成25年度以降の研究を促進するための基盤情報の整備を目的として、過去約10年に渡る、衛星観測で毎日得られた分光反射率データを収集し、複数の分光植生指数により、日本とボルネオにおける、植生の時空間分布の変動を図化できた。以上の状況を踏まえ、本研究は、概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マレーシアの常緑広葉樹林(ランビルヒルズサイト)と日本の落葉広葉樹林(高山サイト)において、以下の(1)毎日の自動観測データと、(2)人間による定期的な観測データを"継続的に"取得する。 (1)自動観測データ:分光植生指数(NDVI・EVI・GRVI)・森林全体及び樹種毎のフェノロジー(生物季節)画像・天空画像 (2)人間による観測データ:葉の形質情報(大きさ・枚数・SPADクロロフィル・角度分布)・詳細な分光スペクトル情報 ランビルヒルズサイトでは、可視青と可視緑の分光反射率を測定するため、光量子センサーを新設する。 両広葉樹林サイトを対象に、衛星と近接リモートセンシング観測で得た分光反射率データや分光植生指数と、生態系の構造や機能(葉量バイオマスや葉群フェノロジー、葉の形質情報、潜在的な光合成能力、実際の光合成生産量)や環境要因(気象・気候値)との対応関係を詳細な地上観測値に基づいて、個体から群落スケールで明かにする。このとき、常緑広葉樹林と落葉広葉樹林にみられる、特異性・普遍性・不確実性の検出を目標とする。 インドネシアやパプアニューギニアを含む熱帯地域を対象に毎日の、日本やボルネオを含む東アジア地域を対象に8日値の、Terra/Aqua MODIS衛星で観測された分光反射率データを収集し、複数の分光植生指数により、植生の時空間分布の変動を広域的に図化する。これにより、平成26年度に計画する、衛星観測による広域的な広葉樹林の機能評価のための基盤情報を整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マレーシアの常緑広葉樹林(ランビルヒルズサイト)において、観測機器の保守及びデータ回収、森林を構成する代表的な樹種を対象とした、葉の形質情報や詳細な分光スペクトル情報を取得するため、計4回、渡航旅費を計上する。また、ランビルヒルズサイトにおいて、可視青の分光反射特性を観測するため、光量子センサーの付属部品を購入する。
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