対流圏と成層圏の空気(物質)のやり取りがどの程度行われているのかまだ分かっていない。本研究では、成層圏に到達するほど発達した積乱雲(オーバーシュート)が成層圏にどれほど水蒸気を運ぶのかを人工衛星を用いた観測で明らかにすることが目的である。 前年度までの研究を進めた結果、オーバーシュートから1-2km上の成層圏に雲がある事例が衛星データの中から見つかった。そのうちいくつかは成層圏の中で2層になった雲であった。文献調査した結果、1982年に竜巻研究で知られる藤田博士が最初に見つけたジャンピングシーラス、または、そのジャンピングシーラスを最初に数値実験で再現したWang教授のモデルで予測されたオーバーシュートプルーム(いまだに誰も見たことがない)と思われた。 どちらの雲も(非断熱過程で)成層圏の空気のやり取りをしながらオーバーシュートで生成される雲のため、効率的に対流圏の物質(オーバーシュートの水など)を運ぶことが出来る。モデル計算と観測事例を突き合わせた解析を進めた結果、2層の成層圏の雲はオーバーシュートプルームであろうと推測された。いくつかの事例解析から、衛星データの中からこの雲を自動判別するしきい値を導き出し、全球規模での成層圏の雲の分布を調べ、アジアのモンスーンの時期の前に起きやすいことが分かった。この時期の対流の背は高くなることが観測的に知られている。このため、背の高い積乱雲が成層圏に雲(物質)を投げ込んでいることが分かった。この結果は2014年秋の気象学会で発表した。
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