研究課題/領域番号 |
24710026
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
丸本 幸治 国立水俣病総合研究センター, 国際・総合研究部, 主任研究員 (90371369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メチル水銀 / 大気 / 大気粒子 / 大気液相 / 降水 |
研究概要 |
大気および大気液相中におけるメチル水銀の生成・消失機構に関する知見を得るため、大気中のガスおよび粒子状物質に含まれるメチル水銀の定量を試みた。ガス中のメチル水銀は塩化カリウムでコーティングしたデニューダ管を用いて捕集し、希硫酸溶液で抽出した後、抽出溶液をジチゾン抽出-エチル化ホウ素ナトリウム誘導体化-ガスクロマトグラフ-原子蛍光法(以下、ハイブリッド法)にて定量した。しかしながら、実試料においての検出はできなかったため、今後捕集方法等の再検討が必要である。大気粒子状物質中のメチル水銀(粒子状メチル水銀)は、ハイボリュームエアーサンプラーによりフィルターに捕集した試料について定量を行った。粒子状メチル水銀を1 mol/Lの水酸化カリウム-エタノール溶液で抽出した後、ハイブリッド法により定量した。本定量法による検出限界濃度は0.002 pg/m3(大気吸引量3000m3の場合)であった。実試料について定量した結果、粒子状メチル水銀濃度は0.003 pg/m3~0.008 pg/m3と極めて低い濃度であった。標準溶液による添加回収試験も実施した結果、回収率は90%以上であり、概ね良好であった。しかしながら、大気粒子状物質からメチル水銀が完全に抽出できているか、捕集過程におけるメチル水銀の変質については依然として不明である。いずれにしてもガス状および粒子状のメチル水銀濃度は極めて低いことが予想されたため、メチル水銀の生成は大気液相中で起こっている可能性がある。大気液相(降水、霧、露)のうち、降水中のメチル水銀は継続的にモニタリングを行っており、2012年4月から12月までの雨量加重平均濃度は35.0 pg/Lであった。霧と露については今後試料捕集を行い、メチル水銀の分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大気粒子状物質中のメチル水銀(粒子状メチル水銀)の定量については、極めて低い検出限界濃度を達成し、実試料の定量もできた。しかし、大気中ガス状メチル水銀の定量ができなかった。既往の文献によると、塩化カリウムでコーティングしたデニューダにより塩化メチル水銀の捕集が可能であるとのことであったが、本研究では検出できなかったため、試料捕集方法および分析方法を再検討する必要がある。一方、降水中のメチル水銀のモニタリングは順調に進んでいるが、霧および露を採取する霧水サンプラーの調達が遅れたことにより、それらの発生頻度が多い晩秋から初冬に予定していたサンプリングに間に合わなかった。霧水サンプラーの発注から納品まで約4ヶ月を要したのが大きな誤算であった。しかしながら、霧や露の試料量が少ないことを想定して、降水試料を用いて少量の試料で分析できるか検討したところ、濃度にも依るが40~50 ml程度で分析が可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
大気中のガスおよび粒子状物質に含まれるメチル水銀の定量方法についてまだ検討の余地が残されているため、早期に解決し、定量法を確立していく。また、降水中メチル水銀のモニタリングを継続し、一降雨分割採取を実施することにより、降水中のメチル水銀の濃度変動を調べ、大気中メチル水銀の降水への取り込み過程もしくは降水中におけるメチル水銀の生成過程に関する知見を得る。さらに、霧や露についてもメチル水銀分析に必要な試料量を確保するための検討を行い、その後メチル水銀の定量を行うとともに、濃度変動要因について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
メチル水銀および水銀のメチル化に寄与する可能性のある有機物の分析に必要な試薬および試料保存容器、並びに実験器具を購入するために300,000円を使用する。また、次年度使用額379,986円が生じたため、分析装置の維持に必要な消耗品に使用する。メチル水銀等の分析にあたっては実験器具の洗浄作業および分析作業に多大な炉応力を要するため、実験助手1名の賃金(10日間/月、5,000円/日=600,000円)を計上する。研究協力者である広島大学の佐久川弘博士と竹田一彦博士の元で実験および研究打合せを行うためと、研究成果を学会等で発表するために旅費として100,000円を使用する予定である。
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