研究課題
若手研究(B)
本研究では、有望な造林樹種であるグイマツ雑種F1を対象として、温暖化低減能力に対する人為起源の環境変動(大気CO2濃度の増加、対流圏オゾンおよび窒素沈着)の影響を調べる事を目的としている。初年度となる平成24年度は、CO2、オゾンおよび窒素付加を行ったグイマツ雑種F1の光合成および成長に関する測定を行った。窒素付加に関する実験において、グイマツ雑種F1の樹冠上部と下部の光合成活性の比較調査を行った。その結果、樹冠下部では気孔を開き気味にすることによって、葉内のCO2濃度を高く保ち、樹冠上部と同程度の光飽和条件の純光合成速度を実現できる事、これらの光合成特性に土壌への窒素付加は影響を与えない事が明らかになった。さらに、窒素沈着の影響は、土壌環境によって異なる事が予想されたため、特殊土壌である蛇紋岩土壌においても、グイマツ雑種F1に対する窒素付加の影響を調査した。その結果、蛇紋岩土壌では土壌への窒素付加によって針葉の光合成活性の低下および成長の低下が引き起こされることが明らかになった。高CO2応答に関して、開放系CO2付加設備で育成したグイマツ雑種F1の一部の個体を掘り取り、成長の解析を行った。その結果、高CO2によって成長が増加するものの、根への乾物分配が低下することが明らかになった。さらに、カラマツ、グイマツおよびグイマツ雑種F1の成長と光合成に対する高CO2とオゾンの複合影響を、オープントップチャンバーを用いて調査し、グイマツ雑種F1はカラマツ、グイマツよりオゾン影響を受け易い事、高CO2でオゾン影響が緩和される事を発見した。また、同実験系において、グイマツ雑種F1の針葉からの揮発性有機化合物の放出に関する測定(ガス採取)を8月に行い、分析および結果の解析を進めている。これらの成果の一部は国内および国際学会で発表し、国際学術誌に原著論文として記載された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度はCO2、オゾンおよび窒素付加を行ったグイマツ雑種F1と植栽土壌の各温室効果ガス収支の測定を開始する事と、オゾン濃度、窒素沈着量の野外調査を開始する事が主たる目的であった。樹体に関する各測定に関しては、特に滞りなく進行することができた。さらに、グイマツ雑種F1および比較対象とする他樹種の成長や光合成に対するオゾン、高CO2および窒素沈着の影響に関しては、国際学術誌への論文掲載もあった。この点に関しては当初の計画以上に進展していると言える。しかし一方で、野外におけるオゾンや窒素沈着のモニタリングに関しては、新しい機器の導入などに際して予備調査を行う必要があった為、やや遅れが生じた。したがって、全体としては、「研究はおおむね順調に進展している」と評価した。
平成25年度も原則として昨年度の調査を継続する。すなわち、CO2、オゾンおよび窒素付加を行ったグイマツ雑種F1の光合成および成長に関する測定を行う。また、グイマツ雑種F1のオゾン感受性がグイマツやニホンカラマツに比べて高い(悪影響を受けやすい)という結果が得られたことを受けて、より詳細を明らかにするために、4段階のオゾン濃度を設定したオゾン付加実験を、平成25年度に開始する予定である。また、オゾンと窒素付加の複合影響に関する調査も行う。土壌の温室効果ガスおよび針葉からの揮発性有機化合物放出に関しては、これまでに測定した結果の解析に取り組みたい。オゾン濃度の測定に関して、より安価な手法でオゾン濃度の連続測定ができる機器の情報を入手した。そこで、そのオゾンモニターの性能試験を行う。最終年度(平成26年度)に向けて、地理情報システムの為のデータベース構築に着手する。
平成25年度に実施するオゾン付加実験のオゾンモニターの購入に充てる。
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