研究課題
本研究では、有望な造林樹種であるグイマツ雑種F1を対象として、温暖化低減能力に対する人為起源の環境変動(大気CO2濃度の増加、対流圏オゾンおよび窒素沈着)の影響を調べる事を目的としている。2年目である平成25年度は初年度からの継続調査を中心に行った。高CO2応答に関して、開放系CO2付加設備で育成したグイマツ雑種F1と、その親樹種であるカラマツおよびグイマツについて、葉における光合成活性の比較を行った。その結果、グイマツ雑種F1では高CO2環境において光合成能力の低下が起こり、期待したほど光合成速度が増加しないことが示唆された。開放系オゾン暴露設備を利用したオゾンと窒素付加の複合影響に関する調査を開始した。ニホンカラマツでは窒素付加によってオゾン害が減少したのに対して、グイマツ雑種F1では、そのような窒素付加によるオゾン害緩和作用は見られず、同じカラマツ属内においてもオゾンと窒素付加の複合影響において樹種間差異があることが明らかになった。カラマツ属と分布する地域が類似しているカバノキ属とミズナラについても、高CO2やオゾンの影響に関する調査を進めた。カバノキ属においては高CO2によって光合成速度および個体乾物成長が増加するものの、その程度には樹種間差異がある事を発見した。また、シラカンバでは夏に出葉する葉に比べて春に出葉する葉において、オゾンの影響を受けやすい事が明らかになった。一方、ミズナラに関しては、高CO2環境でうどんこ病への抵抗性が増加する事を発見した。さらに、ミズナラはオゾンの影響を受けにくい樹種である事が確認された。これらの成果の一部は国内および国際学会で発表し、国際学術誌に原著論文として掲載された。
2: おおむね順調に進展している
各実験は大きなトラブルもなく順調に進行した。11月に北海道大学から東京農工大学に異動したが、植物のCO2吸収を始めとした生理活性が高い時期(5~10月)において、各種測定が行われたため大きな支障はなかった。異動後も北海道大学の実験サイト管理者と密に連絡を取り合い、研究を進めている。また、初年度に得た研究成果のいくつかは原著論文として国際学術誌に掲載した。一方、野外におけるオゾンのモニタリングに関して、新しい機器の導入の際に、他の気象要因(気温など)による補正式を作成する必要があった為、遅れが生じた。したがって、全体としては、「研究はおおむね順調に進展している」と評価した。
基本的な実験的研究は完了したが、成果の再現性を確認するため、開放系オゾン暴露によるグイマツ雑種F1へのオゾン暴露実験を平成26年度も北海道大学で行う予定である。これらの実験的研究の結果に関するモデル化を行い、地理情報システムによる広域評価を進める。なお、広域評価を行うためのデータベース構築は平成25年度に着手しており、平成26年度はモデル化が中心となる予定である。
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