研究課題
本研究では、有望な造林樹種であるグイマツ雑種F1を対象として、温暖化低減能力に対する人為起源の環境変動(大気CO2濃度の増加、対流圏オゾンおよび窒素沈着)の影響を調べる事を目的としている。3年目である平成26年度はこれまで中心的に行ってきた成長および光合成に対する環境変動の影響に加えて、共生菌類との関係についても研究を行った。また、これらの実験的研究で得られた成果に関するモデル化に取り組んだ。カラマツ属では根における外性菌根菌との共生は生存上欠かせないだけでなく、環境変動に対する応答においても重要な役割を果たす。そこでグイマツ雑種F1の菌根菌との共生関係に対する高CO2とオゾンの複合影響を調査した。その結果、高CO2によって菌根形成率が増加した。しかし一方でオゾンによって菌根菌形成率は低下し、さらに菌根菌の種多様性が低下することが明らかになった。実験的研究で得られた成果のモデル化について、グイマツ雑種F1の光合成生産に対する環境変動の影響評価モデルを組み上げるには、残念ながら十分な量のデータセットが得られなかった。一方で比較対象として同様の研究を進めてきたブナおよびカバノキ属では十分なデータセットを得ることができたため、これらを対象としてベースとなるモデルの構築を行った。葉群としての光合成生産に対するオゾンおよび高CO2の影響評価モデルを構築し、葉群のCO2収支を算出した。その結果、樹冠位置の違いに伴うオゾン感受性の違い(ブナでは樹冠上部の葉がオゾンの悪影響を受けやすい)や呼吸速度に対する影響(オゾン・高CO2いずれの処理でも呼吸速度が増加)を葉群光合成生産モデルに組み込む必要性が明らかになった。本科研費による研究期間は終了したが、構築したモデルのグイマツ雑種F1への適用に今後取り組む。これらの成果の一部は国内および国際学会で発表し、国際学術誌に原著論文として掲載された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (30件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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