研究課題/領域番号 |
24710029
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大石 善隆 信州大学, 農学部, 助教 (80578138)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 蘚苔類 / 温暖化 / 中部山岳地域 / 多様性 / 生物指標 / 標高傾度 / モニタリング / 保全 |
研究概要 |
温暖化に対するコケ植物の応答を指標として亜高山~高山帯生態系の変化や脆弱性を評価する手法を開発することを目指し、今年度は以下の3つの課題を進めた。 (1)標高傾度に沿ったコケ群落変化パターンの把握:環境条件(標高・植生・斜面方位・温湿度など)に応じたコケ群落の変化パターンを把握するため、標高傾度に沿ってコドラート(10m×10m)を設置し、方形区内のコケ植物出現種・被度の記録、環境条件(高木・低木・草本被度、斜面方位、傾斜)の計測を行った。調査地は南八ヶ岳の登山口から山頂に至るまでの9ルートとし、いずれのルートも標高1400m~2800mまで、標高200mおきにコドラートを設置した。さらに微環境条件とコケ植物多様性との関係を詳細に把握するため、各コドラート内に3~9個のサブコドラート(1m×1m)を設置し、コケ植物出現種・被度、微環境条件(高木・低木・草本被度、生育基物)について記録した。 (2) 室内実験:人工気象機(LH-60FL12-DT;日本医化器械製作所)・光合成測定装置(LI6400;メイワフォーシス社)を用いて地球温暖化シナリオ下におけるコケ植物の光合成活性等を計測し、温暖化に敏感に応答すると考えられた一部の種(ジンチョウゴケ等)の光合成活性と温度との関係について検討した。しかし、計測中に植物体の水分含有量が変化する等したため、妥当性のある結果は得られていない。現在、既存の文献を参照しつつ、効果的な計測方法について検討している。 (3) 野外実験:将棋頭山(長野県)に開放型温室を用いた温暖処理区を設定し、群落レベルにおける温暖化に対するコケ植物の応答(優占種の変化等)に関する計測に着手した。植物種の被度変化について、現在、モニタリングを行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査については、おおむね順調に進展している。 しかし、室内実験(光合成活性の計測)については、安定した計測ができていないため、現在、メイワフォーシス社(光合成測定装置製造会社)等と連絡をとりながら計測手法の改良を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
2012年度に引き続き、調査地におけるコケ植物多様性・環境データの把握を行う。これらのデータを用いて標高傾度に沿ったコケ植物群落変化パターン(コケ群落の垂直分布)を把握する。 さらに、室内実験の結果も考慮して、温暖化に伴うコケ群落の劣化プロセスを予測・検討し、温暖化に対して高い指標性をもつ群落や種を抽出する。 以上の結果に基づいて、温暖化に敏感に反応するコケ植物指標を用いて、温暖化に対する生態系の応答や脆弱性を評価する手法を開発する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
光合成の測定について、当初はTPS2・CO2/H2Oアナライザーを購入する予定だったが、より本実験に適した機器LI6400のレンタルが可能になったため、本機器をレンタルすることにした。そのために、当初の購入予算をレンタル料として使用することになり、次年度使用額が大幅に増加している。 また、24年度中に野外環境データを計測できなかったことも、新たな調査費用等が生じた要因である。 25年度については、引き続き光合成活性測定機器のレンタル料、野外調査費用、英文校正費用(論文)等に研究費を使用する。
|