研究課題/領域番号 |
24710029
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大石 善隆 信州大学, 農学部, 助教 (80578138)
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キーワード | 蘚苔類 / 温暖化 / 中部山岳地域 / 多様性 / 生物指標 / 標高傾度 / モニタリング / 保全 |
研究概要 |
温暖化に対するコケ植物の応答を指標として亜高山~高山帯生態系の変化や脆弱性を評価する手法を開発することを目指し、今年度は(1)標高ごとに取得したコケ多様性データについて、環境要因との関係の解析を進めるとともに、(2)気温の上昇に対するコケ植物の光合成活性の変化の把握、および(3)一部のコドラートにおける温湿度データの計測、を試みた。各結果について、以下に示す。 (1)コケ植物多様性と環境条件(標高・植生・斜面方位)との関係について解析を行った。その結果、コケ群落の種組成・種多様性ともに標高傾度が強く影響していることが明らかになった。特に、一部の種は高標高域のみに分布が限られており、地球温暖化に伴う気温の上昇や、それに伴う湿度環境の変化の影響を強く受ける可能性があると示唆された。興味深いことに、低標高から高標高にまで連続して出現している種であっても、一部の種は外部形態が種内で異なることが明らかになった。これは高山の厳しい環境下における適応の一つであると考えられる。 (2)昨年度に続き、光合成測定装置を用いて地球温暖化シナリオ下におけるコケ植物の光合成活性の計測を試みた。しかし、変水生植物であるコケは計測中に植物体の水分含有量が変化するため、現在使用していてる小型チャンバーでは安定したデータを得ることは難しいと結論された。 (3)一部のコドラートについて温湿度データの計測を試みたが、機器不良等により、データの計測が進まなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
温湿度データの計測が進まなかったこともあり、予定よりも研究が遅れている。そこで、当初2年計画だった本研究を3年計画に変更し、今年度、温湿度データの計測を行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行えなかった温湿度データの計測を実施するとともに、このデータを用いて(1)標高傾度に沿ったコケ群落の変化パターンを把握し、(2)、温暖化に伴うコケ群落の劣化プロセスを予測・検討し、(3)温暖化に対して高い指標性をもつ群落や種を抽出する。 以上の結果に基づいて、温暖化に敏感に反応するコケ植物指標を用いて、温暖化に対する生態系の応答や脆弱性を評価する手法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
温湿度データの計測が進まなかったこともあり、予定よりも研究が遅れている。そこで、当初2年計画だった本研究を3年計画に変更し、今年度、温湿度データの計測を行うことにした。 温湿度データ計測のための旅費、ならびに研究成果発表に関する費用として使用する予定である。
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