本研究では造礁サンゴ類における温度ストレス影響と個体群内での差異を検討した。「単口ポリプ=個体」として存在するトゲクサビライシを対象とした実験の結果、代謝への影響が顕著となる体サイズ期が、性成熟期と重なることが明らかとなり、生活史上でのトレードオフによると思われる一時的代謝調整能の低下が示唆された。また、コユビミドリイシを対象とした、浮遊幼生、初期ポリプ、成体期の各段階の温度ストレス応答を比較により、浮遊幼生・成体期に比べ、初期ポリプ期での骨格生長および出芽が顕著に抑制されることから、温帯域にかけて浮遊幼生として分散が起きた場合、初期の成長抑制が生存のためのボトルネックとなることが示唆された。
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