研究概要 |
屋外土壌の1 m四方の土地に各0, 300, 500および1000 g/m2の濃度になるように消石灰を1回のみ散布し、経時的に表面土壌と深さ5 cm土壌のサンプリングを行い、pH測定およびR2A寒天培地を用いた生菌数測定を行った。表面土壌と5 cm土壌のpHはともに、消石灰散布土壌が未散布土壌と比較して0.5~1程度高い値を示し、長期間(約8ヶ月)経過後も同様の差がみられた。生菌数測定の結果では、消石灰散布と未散布の間で各土壌中に存在する生菌数に差異は認められず、濃度による違いも見られなかった。農林水産省は消毒を行う際、500~1000 g/m2の濃度で消石灰を散布し、雨が降った際は再び散布し直すなど複数回散布するよう各自治体に通達している。そこで、単回消石灰散布場所とは別の2 m四方の土地に上記と同じ濃度で1週間ごとに繰り返して、計3回散布を行った。経時的にサンプリングした表面土壌と5 cm土壌は上記と同様の方法でpH測定および生菌数測定を行った。さらに、原子吸光光度計を用いて交換性陽イオン(Na, Mg, K, Ca)、吸光光度法により可給態リン酸およびアンモニア態窒素の測定も行った。複数回散布の場合でも単回散布の結果と同様に、表面土壌と5 cm土壌のpHはともに、消石灰散布土壌が未散布土壌と比較して2程度高い値を示した。生菌数測定結果も単回散布の結果と同様に、消石灰散布濃度による土壌中の生菌数に差異は認められなかった。交換性陽イオン濃度の比較では未散布と比べて、Na, Mg, Kに大きな変化は見られず、Caに関しては散布土壌で高い数値を示したが、総散布量との相関はなかった。これらの結果より、消石灰を散布することで土壌中の生菌数には影響を及ぼさないが、土壌はアルカリ性に傾き、Caが蓄積していることから、長期間経過後も元の環境に戻っていないことが明らかとなった。
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