研究課題
昨年度確立した化学汚染のPlanetary Boundary(化学汚染のPB)の評価項目の設定のための基盤を活かし、海棲哺乳類(主にハクジラ類とアザラシ類)の大量へい死数および高次消費者におけるポリ塩化ビフェニル(PCBs)の異性体11種の濃度と、全球多媒体モデルFATE(Finely-Advanced Transboundary Environmental model)によるPCBs暴露量の推定を比較した。特に、ベイズ不確実性解析によって、FATEが海棲哺乳類のPCBs暴露量(生物濃縮)を予測できる程度を検証した。また、PCBs暴露量と累積へい死数の比較から、海棲哺乳類(ハクジラ類とアザラシ類)が大量へい死に至る臨界暴露量を推定することができた。この臨界暴露量を超えた海域は、事実上のPCBs汚染のホットスポットであり、1980年代後半以降に起こった大量へい死イベントとの因果関係を説明する手がかりになった。PCBs暴露→個体の免疫低下→感染症発症→大量へい死に至る過程の疫学については、現在検討中である。しかしながら、PCBs暴露量と感染症のリスクの定量関係については、既往の研究にもその知見があることから、本研究の成果と統合することで、臨界暴露量に基づいて、化学汚染のPBの定量化を具体化する方法を提案する道筋をつけた。生物濃縮過程の不確実性については、その評価方法に改良の余地があり、今後の課題となった。
1: 当初の計画以上に進展している
化学汚染のPBの定量化がほぼ確立したため。
計画書の通り、進める。
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Environmental Science & Technology
巻: 48 ページ: 3245-3252