研究課題/領域番号 |
24710039
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人土木研究所 |
研究代表者 |
森 照貴 独立行政法人土木研究所, 水環境研究グループ, 研究員 (50600095)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 掃流砂 / ダム / 濁水 / 底生動物 / 付着藻類 / 一次生産 / 河川 |
研究概要 |
本年度は、下記の3つの研究課題について実施した。 1. シルトの堆積が付着藻類の生産性に及ぼす影響:野外の河川でタイルに定着させた付着藻類を、濁水(SS濃度, 1000 mg/Lもしくは10,000 mg/L)に曝し、得られた付着藻類の生産速度を測定した。その結果、無機物の堆積が多くなるほど、生産性が低下することが明らかとなり、このことから無機物の堆積は、付着藻類の更新を妨げる可能性が示された。 2. シルトの堆積が藻類食者の摂食量に及ぼす影響:1と同様にタイルに定着した付着藻類を濁水に曝し、無機物が堆積した付着藻類を2種類の藻類食者(コヤマトビケラ属の1種とエルモンヒラタカゲロウ)と一緒にメソコスムに投入した。その結果、コヤマトビケラ属の1種はシルトが堆積していたとしても、付着藻類を摂食しており、その量に変化はなかった。一方、エルモンヒラタカゲロウは付着藻類にシルトが堆積していることで、摂食量がわずかに減少していた。そして、藻類食者による違いは、口器の違いに起因していると考えられ、生態的特性に応じて付着藻類からの影響の受け方が異なることが明らかとなった。 3. 藻類食者による摂食が付着藻類の遷移過程に及ぼす影響:2と同様の実験条件を設定し、藻類食者(コヤマトビケラ属の1種とエルモンヒラタカゲロウ)の有無による付着藻類の遷移過程の違いを調査した。その結果、藻類食者による摂食がないことで、付着藻類は大きく成長し、遷移が著しく進行することが明らかとなった。一方、藻類食者が存在することで、付着藻類の遷移が妨げられ、常に遷移初期種が維持されることが明らかとなった。 以上の成果から、藻類食者と掃流砂が存在することで、付着藻類は餌資源としては好ましくない過剰な成長はせず、常に餌として利用される状態が保たれることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、平成24年度に研究計画の仮説①(フィードバックループにより、付着藻類は安定する)と仮説③の一部(掃流砂の欠乏は付着藻類の不安定化をもたらす)について検証する予定であったが、使用できる実験システムを拡張できたことから、H26年度に実施する予定であった仮説③の残り(掃流砂の欠乏により不可逆状態に至り、元に戻らない)についても検証することができた。さらにサンプルを増やして検討することで、より頑健な成果を得る必要があるものの、仮説通りの成果を得られる目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、当初の計画通り仮説②(藻類は不安定化しても洪水によって安定化する)について検証を行う。この仮説を検証するために、野外の実験河川(幅2m、長さ600m)を用いるが、野外であり規模も大きくなることから、H24年度に実施した室内実験よりも、処理区に工夫を施す必要がある。そのため、準備期間に多くの時間を要するが、H24年度に得られた成果を鑑みると、当初、予定していた実験期間よりも短い日数で検証することが可能であると考えられる。そのため、全体としての研究期間は当初の予定通りになると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は当初、予定していたよりも短い実験期間で検証を行うことができたために、予定していた額よりも少ない研究費で実施することができた。H25年度は、研究計画通りの実験を実施する予定であるが、より頑健な成果を導き出すために、処理区と繰り返し数を増やす予定である。そのため、サンプル数が増加することから、H24年度に予定していた研究費の残額をH25年度のサンプル処理に充てる予定である。その他については、当初の予定通り、研究を進める。
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