研究課題/領域番号 |
24710039
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研究機関 | 独立行政法人土木研究所 |
研究代表者 |
森 照貴 独立行政法人土木研究所, 水環境研究グループ, 専門研究員 (50600095)
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キーワード | 掃流砂 / ダム / 洪水 / 底生動物 / 付着藻類 / アユ |
研究概要 |
本年度は、前年度からの継続も含めて、下記の2つの研究課題について実施した。 1、河川において発生する洪水と掃流砂の流出が、水生昆虫などの底生動物に付着藻類(餌資源)を介してどのような影響を及ぼすのかについて検証を行った。河床にタイルを設置することで付着藻類の定着を促した後、流速を2段階に操作した実験水路内に設置した(0.5 m/s、4.0 m/s)。その際、掃流砂の有無についても操作を行った。各流水条件に曝した付着藻類を2種類の水生昆虫に与えたところ、高流速で掃流砂が存在する付着藻類は現存量が低いものの生産性が高いために、水生昆虫の餌資源として十分に機能することが明らかとなった。一方、低流速で掃流砂が存在しない場合でも水生昆虫は餌資源として利用していたが、付着藻類が糸状藻類へと変化する場合もあり、餌としては不適な状態へと変化することもあった。 2、水産重要種であるアユを対象に、河床に存在する砂の消失がどのよう影響を及ぼすのかについて検証を行った。実験河川において長さ10mの実験区を設置し、アユの有無と河床の砂の有無を操作した。砂が欠乏することで、付着藻類に含まれる無機物含有量は多くなる傾向にあったが、アユはその多寡に関わらず摂食を行っていることが明らかとなった。ただし、無機物を多く含む付着藻類のみを餌として利用していたアユについては、肥満度が低下している個体も存在した。 河川において貯水ダムが建設されることで河床を流れる掃流砂は欠乏しやすくなるが、洪水撹乱が発生する際に流量の増加だけでなく、掃流砂が流れることで、付着藻類を剥離する効果は大きくなるものと考えられ、付着藻類の剥離・更新が進むことで藻類食者にとって質の良い餌資源が提供される可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成25年度に研究計画の仮説②(藻類は不安定化しても、洪水によって安定化する)について検証を進める予定であったが、洪水を発生させる計画については気象条件(河川の流量減少)の問題から、一部を見送ることとなった。ただし、平成24年度に平成26年度に行う予定の実験を既に進めていることから、全体としての研究計画については順調に進められており、仮説②の検証についても平成26年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の計画通り仮説④(濁水は付着藻類の不安定化を促進し、不可逆性を強める)についての検証を進める。平成24年度と25年度に行った実験により、既に実験を行うためのシステムについては構築されている。気象条件が整えば、流量の操作を行うことも可能であり、平成25年度に実施する予定だった研究課題についても進められるものと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外誌への論文の掲載料として約6万円を予定していたが、査読とその修正に時間がかかってしまい、該当年度内での支払がなくなったため、次年度使用額が生じた。 該当論文については、すでに提出済みのため、平成26年度内に掲載料として約6万円使用する予定である。
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