流砂の減少が付着藻類と魚類(アユ)の相互作用に及ぼす影響について、室内およびおよび野外実験にて検証を行った。野外実験については、出水の影響で実験を最後まで継続することが困難であったが、室内実験により補完データを取ることで、流砂ー付着藻類ー魚類の相互関係に関する知見を得ることが出来た。 室内実験の結果、流砂の増加は付着藻類の現存量を低下させる一方で、生産性を高めることが示された。また、流砂と同様にアユによる摂食も付着藻類の現存量を低下させるが、生産性を高める傾向にあった。ただし、流砂による付着藻類の磨耗と、アユによる摂食とでは、付着藻類の群集構造に及ぼす影響は異なる可能性が示唆された。そして、野外実験の結果、流砂の欠乏は付着藻類が多いにも関わらず、アユの肥満度の低下をもたらすことが明らかとなった。これは、付着藻類の餌資源としての質が低下したためと考えられた。ただし、肥満度の低下については、アユのサイズによってバラツキが大きく、個体のコンディションによって影響が異なる可能性が示唆される。また、過剰な砂を人為的に河川へ供給することで礫が埋没し、付着藻類の生育面積の減少によるアユへの影響が危惧されているが、このような礫の埋没はアユの生育にわずかではあるが負の影響を及ぼしていた。以上の結果から、流砂の欠乏は付着藻類の餌資源としての質の低下を介して、過剰な流砂の存在は付着藻類の生育面積の減少による量の低下を介して、アユに負の影響を及ぼす可能性が示唆された。
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