地球温暖化によって最近100年間で世界的な平均気温が約0.7℃上昇している。とくに都市部では、ヒートアイランド現象による影響が加わり,高い温度上昇率である(例えば東京都心で約3.5℃).さらに気温だけではなく地下も温暖化していることがわかってきた。地下温度が上昇すると地中の微生物環境や水質への悪影響等も懸念される。このことを踏まえ、本研究は地下温暖化についての調査を進めてきた。地下の熱環境を調べるもっとも直接的な方法は,深さ数十メートルから数百メートルの地下水観測井で地下の温度分布を計測することである。本研究は関東平野を対象としており、都心部(東京都文京区の東京大学本郷キャンパス内)の観測井で2013年度、2014年度に引き続き、2015年度も、地下温度の再計測を実施した。さらに都市近郊部に位置する4地点(川口、八潮、三芳、熊谷)も同様の再計測を行った。次にこれまで3年度分の測定データのとりまとめた結果、本研究の期間内に測定した最近の温度分布と11年前に測定した温度分布(2003年度)を比較すると多くの地点で地表から約50mまでの深さの温度が上昇していることが確認された。現在も地表面の温度上昇は、続き深度方向に進行しているものと考えられる。また都心から50km以上離れた熊谷でも地下温暖化は明確に観測されたことから関東平野においては、当初予測したよりも面的に広域的に地下温暖化が広がりつつあることが分かった。本研究によって、関東平野における地下温暖化は深度方向と面方向の両者で広がっていることがわかった。現在の状況が続けば、将来的にわたって「地下の温暖化」は進行し続ける可能性が示唆される。
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