研究概要 |
本研究で開発を目指す「エコロジカル・タイム・ロス指標」について、関連する指標の調査と概念整理を引き続き行った。また、具体事例として、東日本大震災および福島第一原発事故によって甚大な影響を受けた福島県を対象に、基礎となる物質フローの推計を行った。福島第一原発事故前の2008年と、事故が起きた2011年度の物質フローを比較した。その結果、「入口」側の指標では、例えば「総物質投入量」が約4,237万トンから約2,694万トンへ4割程度減少したことなどが確認された。一方、「出口」側の指標では、「最終処分量」は約91万トンから約63万トンへ3割程度減少したものの、除染に伴う土壌や汚染水、廃炉に伴う廃棄物等を含めた「保管・残り」の量は約3,173万トンにのぼり、総物質投入量をも上回る規模で廃棄物が発生したと見積もられた。 本研究課題におけるもう一つの大きなテーマである「持続可能な発展のための教育」(ESD)に関しては、日本とドイツを対象に、国の省庁によって作成された、原子力に関する副読本を取り上げ、その記述における公平性の特徴を指摘し、論文を発表した。ESD事業の教材として認定されているドイツの副読本では、原発の是非をめぐる賛否両論を様式上も公平に扱うなど、公平性を確保し、判断力を育むための工夫が見られる点が明らかとなった。 また、日本の原子力に関する副読本については、テキストマイニングと感性解析を行って、公平性に関する特徴を把握した。文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁が2010年に発行した副読本2冊と、文部科学省が2011年に発行した副読本3冊を取り上げて分析を行い、その結果を2013年12月20~21日にフランス・パリで開催されたThe MacroTrend Conferencesにて発表した。
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