研究課題/領域番号 |
24710044
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 暖生 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10450214)
|
キーワード | 英国 / 静岡県島田市 / 岐阜県関市 / アクセス権 / リスクの負担 / 資源への投資 / 資源の商品性 |
研究概要 |
平成25年度は、初年度に計画していながら実現できなかった海外事例の調査を行った。計画に掲げたオープン・アクセスの状況にある事例として、パブリック・アクセス権を定めているイングランドを調査した。パブリック・アクセス権は、土地所有者あるいは農民と利害対立する関係にあるが、それは必ずしも特定の資源をめぐっての競合ではないこと、所有者・農民の既得権の及ばない範囲でのアクセスが一般大衆によって叫ばれ、それが世論の大きな流れとなって法制化にいたったこと、法制化されてもなおパブリック・アクセス権をめぐる緊張状態にあり、市民によるボランタリーなモニタリング・維持活動・運動によって、その権利が保全され、あるいは広げられようとしていることが明らかになった。主体によって対象とする資源が競合していないにもかかわらず、緊張状態にいたる背景には、既得権者によるテリトリー意識、リスクに関するコスト負担を要因として考慮に入れねばならないことがわかってきた。国内調査では、静岡県島田市、岐阜県関市での事例調査を行った。これらの地域では、山林資源の利用が全般的に減退したことにより、新たな山林の活用が模索されていた。いずれの地域でもコミュニテイ外のメンバーにもアクセスを開こうという動きが見られたが、消費的資源をめぐっては、メンバーシップを固定し、きわめて限定的な開き方をとりつつあることが分かった。この事例では、排除的な対応を説明する仮説のひとつである資源への投資が認められたが、対象資源の資源の商品性についても、今後、検討の余地があることが見えてきた。 関連する研究者のディスカッションとしては、アクセス権に応じた生態系サービスのパフォーマンスの相違について日本森林学会で発表し、ディスカッションを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度の前半は国際学会の大会の事務局として専念せざるを得なかったため、予定していた国内の現地調査を秋以降に行わざるを得なかった。初年度に訪問した調査地での継続調査は実施できなかったが、新規での調査地を設定したことにより、仮説検証作業を進めることができた。また、初年度に予定していた海外調査も、この年度の後半に行わざるを得なかったが、これまで想定しなかった有用な知見を得ることができた。 過去のテリトリー制に関する理論的な研究の整理は、十分に行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度は、商品的な資源利用の影響について、それをみるのにふさわしい調査地を2、3追加する。また、これまでの調査地についても、この観点からの情報収集および経年変化した状況についての情報収集を行う。多くの事例調査は、当初は予定していなかったが、このことにより、計画の遅れを取り戻すとともに、研究内容を充実させる。 理論的側面に関しては、先行研究はある程度収集できているが、これの整理ができていないので、これらの整理・分析を着実に実施する。また、ここから出てきた知見と事例調査のデータとの比較検討を行う。 関連する研究者との研究会あるいは、学会でのテーマセッションを企画し、研究知見のブラッシュアップを図る。
|