平成25年度までの調査、研究交流により、森林副産物の採取をめぐっては、概ね時代が下るにしたがって自由採取から外部者を排除していく傾向が確認されたが、複数の事例において、近年になって一般公衆に資源利用を開く動きがみられるようになっていることが明らかになった。平成26年度は、近年の排除体制の弛緩あるいは意図的な開放化の動態に着目して、岩手県、山形県、新潟県、長野県において、事例の補足・追加調査を実施した。また、極端に開放的な「万人権」と呼ばれる制度を敷くスウェーデンについて、排除の論理との葛藤がどのように対処されてきたのか、調査を行った。 国内および国外の現地調査から明らかになったのは、森林副産物は基本的に自給経済・交換経済の中に長くとどまっており、排除の対象となってこなかった。排除の論理が生じてくるのは、産物の商品化によってであり、日本国内に関しては、30年ほど前から山菜やキノコの全般的な商品化がおこった。商品化は場合によって、資源管理のための投資(栽培)行動につながり、このことが排除の論理を強めることになった。さらに、交通網の整備、モータリゼーションの進展は、農山村地域に多くの外部者をもたらすことになり、これが地元住民の土地所有(領有)観念を刺激し、採取に関する規範に乏しい外部者の行動は時に実害をもたらした。こうした事情により、30年ほど前から多くの農山村地域で、外部者を排除するための看板を設置したり、入林権を採取したりする対応が採られた。しかしながら、こうした対応のコスト負担から消極的に、地域イメージの悪化への懸念、山菜・きのこ文化衰退への懸念から積極的に排除体制を緩める動きが起きていることが明らかになった。 国外事例(北欧)では、同様の排除の論理が存在したものの、資源量の豊富さと野外活動への高い評価、および高い規範の存在が、極めて開放的な制度が維持することになった。
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