研究課題/領域番号 |
24710049
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
泉 留維 専修大学, 経済学部, 准教授 (80384668)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コモンズ / フットパス / アクセス権 / 歩く権利 / 里道 / 国際情報交換 / イギリス:韓国 |
研究概要 |
フットパスは、里山などと同じく、地域の共用資源、ローカル・コモンズである。その資源を有効に用いることで、個人や社会においてそれぞれ便益をもたらす。例えば、社会に対しては、自然環境の保全に寄与する可能性があげられる。それは、特にイギリスなどで制定されている「アクセス権」と関係する。公衆が常にフットパスや入会地等にアクセスできる権利の存在により、排他的な所有権が崩され、所有者の一方的な開発行為を止めることができ、また公衆は自然環境に触れる機会が増すことになる。本研究は、日本およびイギリスのフットパスの現状を明らかにすると共に、アクセス権が自然環境保全にどのような影響を及ぼし得るのかを考察する。 2012年度は、まず日本国内のフットパスの現状を把握すると共に、もっとも取り組みが盛んな地域である北海道を重点的にフィールドワークを実施し、「2つの軸」(フットパス周囲の地権者数、地方自治体の積極性)と「4種のステークホルダー」(地方自治体、市民団体、地権者、訪問者)が織りなす関係構造に着目して、その実態を明らかにしようとした。結果、2点を明らかにすることができた。1点目は、日本国内に少なくともフットパスは64あり、総延長は2,685kmとなっている。そして、一つのフットパスには、複数のコースが設定されている場合が多く、コース数は235となっている。イングランドの総延長18万8,700kmには遠く及ばないが、この約10年での進捗は目を見張るものがある。2点目は、北海道のフットパスは、本州のフットパスと比較して、民間のアクターが積極的に展開しており、フットパス周辺の地権者数も少ないため、調整も行いやすく土地所有者との摩擦も少ない。これらの結果は、3本の論文にして公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本およびイギリスのフットパスの現状を明らかにすると共に、アクセス権が自然環境保全にどのような影響を及ぼし得るのかを考察するものである。2012年度は、まず日本国内、特にもっとも取り組みが盛んな地域である北海道を重点的にフィールドワークを実施し、その実態を明らかにしようとした。結果、2点を明らかにすることができた。1点目は、日本国内に少なくともフットパスは64あり、総延長は2,685kmとなっている。そして、一つのフットパスには、複数のコースが設定されている場合が多く、コース数は235となっている。イングランドの総延長18万8,700kmには遠く及ばないが、この約10年での進捗は目を見張るものがある。2点目は、北海道のフットパスは、本州のフットパスと比較して、民間のアクターが積極的に展開しており、フットパス周辺の地権者数も少ないため、調整も行いやすく土地所有者との摩擦も少ない。日本国内についての課題を2点、ある程度明らかにできたことから、研究はおおむね予定通り進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、フットパスの取り組みが非常に盛んであり、2000年にアクセス権に関する法律が制定されたイングランドの現地調査を中心に研究を進める。具体的には、フットパスの設置に19世紀以降尽力してきたオープンスペース協会への訪問調査や、コッツウォルズのフットパスへ行く予定である。また、ヨーロッパにおけるアクセス権の制定状況やその具体的な条件設定などについて、文献研究も集中的に実施する。 前年度までの成果も踏まえ、環境経済・政策学会などで報告を行う。11月以降、Environmental Economics and Policy Studiesなどの英文誌への投稿を想定した最終的な論文をとりまとめる作業に専念するため、10月までには前年度の現地調査の不備等を補う追跡調査も終える。
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次年度の研究費の使用計画 |
イングランドおよびヨーロッパ各地のフットパスやアクセス権について集中的に研究を行うため、主にイングランドの現地調査およびヨーロッパ各地のアクセス権に関する資料の購入に研究費を用いる。また、研究成果を広く公表するため、英文誌への投稿やHPの作成に関わる費用も計上する。
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