研究課題/領域番号 |
24710051
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京農業大学短期大学部 |
研究代表者 |
下嶋 聖 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60439883)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニホンジカ / リモートセンシング / GIS / 南アルプス国立公園 / 高茎草本群落 / 高分解能衛星画像 |
研究概要 |
1年目の平成24年度の研究計画内容は、「山岳保全管理の現状と課題」と「南アルプスにおけるニホンジカの食圧実態マップの作成」の2点を設定していた。 1つめの「山岳保全管理の現状と課題」について、ニホンジカによる被害実態、対策の有無、植生復元事業など主に山岳地における環境保全管理の現状と課題を明らかにするために、関係行政関係者向けのアンケート票の作成を行った。 ここ数年、各地でニホンジカの採食行動などによる環境への影響が懸念されている。農作物への被害、林業への被害、車・列車への衝突、高山植物の採食(食害)など、様々な被害が生じている。これらの現状把握と課題解決に向け、包括的に取り扱った研究は無く、今後ニホンジカの持続的管理を検討する上で、これら被害実態をとりまとめた基礎データが必要かつ意義の高いものである。 2つめの「南アルプスにおけるニホンジカの食圧実態マップの作成」について、高分解能衛星画像であるGeoEye-1もしくはIKONOS衛星画像をアーカイブスから多時期入手し、現地におけるDGPS測量調査において2002年に設置した防鹿柵、2007年に設置した防鹿柵、採食地のグランドトゥルースを取得した。取得したグランドトゥルースを用いて教師付分類を行った結果、採食圧がかかった高茎草本群落を未採食の高茎草本群落(もしくは植生回復した高茎草本群落)、回復途上の高茎草本群落(もしくは種数が減少している高茎草本群落)、単一種の高茎草本群落、イネ科を中心としたグラミノイド類の草地の4つのクラスに分類することができた。 解析結果は、当該地における野生動物管理を検討する上での基本データとして使用できるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「山岳保全管理の現状と課題」については、1.既往文献収集、2.アンケート票の作成、3.管内で発生した事象を記入できる記入用の地図、4.発送リストの作成、5.アンケート票の発送及び回収、6.データ入力、7.解析、の7ステップで実施した。 現在までのところ、ステップ4まで完了している。既往文献を参考に質問項目を検討し、関係行政関係者向けのアンケート票の作成を行った。併せて既存のGISデータを参照し、管内で発生した事象を記入できる記入用の地図を作成した。いずれも紙ベースで作成した後、関係省庁の行政官に質問内容、実施方法及び回答方法についてアドバイスを受けた。内容に関してはおおむね賛同を得た。しかし、回答方法について紙ベースで実施ではなく電子媒体など回答しやすい形で提供した方が、回収率が上がるとの、現場の行政官の視点からの意見をもらった。実施方法については改善の余地があり、実施については次年度(平成25年度)とした。 「南アルプスにおけるニホンジカの食圧実態マップの作成」については、1.衛星画像のアーカイブス検索、2.画像入手、3.現地調査におけるグランドトゥルースの取得、4.画像解析、5.得られた結果の現場検証、の5ステップで実施した。 現在までのところステップ4まで完了している。衛星画像のアーカイブス検索において、ニホンスペースイメージング社が販売・提供を行っているIKONOS衛星画像及びGeoEye-1衛星画像のアーカイブス検索を行った。対象地は南アルプス国立公園の3箇所(仙丈ヶ岳・馬の背、三伏峠、聖平・茶臼岳)である。各3箇所共に現地にてDGPS測量による防鹿柵設置場所、採食地等の位置を取得した。これらをグランドトゥルースとして教師付分類を行い、3タイプの高茎草本群落に分けた。分類結果の妥当性については、平成25年度に現地調査で検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である平成25年度における研究課題は、「自動センサー付きカメラによるニホンジカの個体把握方法の確立」と昨年度残した課題の一部を実行する。 まず1つめの「自動センサー付きカメラによるニホンジカの個体把握方法の確立」については現在普及している自動センサー付きカメラの比較検討を行う。次に特定の地区、特に高茎草本群落に入出するニホンジカの個体数を把握するため、複数のセンサーカメラを放射状に設置し、360°同時撮影する方法を検討し、あらゆる方向から侵入してきたニホンジカのカウントする方法を提示しその手法を検討する。つぎに2つめの昨年度からの課題として「山岳保全管理の現状と課題」において、アンケート票の発送及び回収、解析まで進める。最後に、南アルプスにおけるニホンジカの食圧実態マップの作成」においては、3タイプの高茎草本群落に分けた分類結果の妥当性について、現地調査を実施し、現場にて分類結果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初設定した物品購入の内、24年度中に野外調査用のノートパソコンを購入と携帯用分光反射計を購入しなかったため繰越金が生じた。また旅費等使用しなかっため、同様に繰越金が生じた。 これは、野外調査用のノートパソコンについては本格的な野外調査の実施を平成25年度に実施することとなったため、購入を見送った。携帯用分光反射計については、当初計画で検討していた分光反射計よりも計測できるスペクトル分解能が高性能な機種が存在しているため、購入を見送った。現在予算と購入方法について検討を行っている。 旅費については、他の防鹿柵設置事例のリストアップを行い、平成25年度に順次実施することとしている。
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