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2012 年度 実施状況報告書

船舶からの大気汚染物質放出規制海域の効果と評価に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24710052
研究種目

若手研究(B)

研究機関東京都市大学

研究代表者

岡田 啓  東京都市大学, 環境情報学部, 准教授 (40450762)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード海運 / 大気汚染物質 / 大気汚染物質放出規制海域 / 定量分析
研究概要

本研究は、船舶起因の大気汚染物質を削減するため日本が大気汚染物質放出規制海域(Emission Control Area、ECA)を設定した場合における効果と影響を分析し、どのように日本にECAを設定すべきなのかという政策インプリケーションを導き出すことを目的としている。なお、本研究は定性的な分析よりも、ECAのモデル化を行い、数値シミュレーションを開発することで、ECAの効果について分析を行うことを試みている。
上記の目標を達成するために2012年度は、ECAと大気汚染物質削減分析手法に関する既存文献のサーベイを実施した。文献サーベイにおいては、次に挙げる5分野について整理を行った。第一に国際海事機関におけるECAの概要と動向、第二にアメリカ・カナダが設定したECAに関する情報整理、第三に日本の委員会におけるECA設定議論の動向把握、第四に学術研究におけるECA研究について、最後にECAもしくは陸地における大気汚染物質排出すなわち外部不経済と空間に関する既存研究である。中でも、第四、第五分野を整理することで、ECAの最適範囲に関する研究が皆無であることが判明した。
そこで、最適なECAの設定範囲を導出するために、Kanemoto(1987)のモデルを参考にしながら、ECAに関する簡易的な理論モデルを構築した。この理論モデルでは線形都市モデルを用いて、ECA範囲という空間に関わる事柄を分析できるようにしている。そしてそのモデルに基づき、ECAの最適範囲に関する条件を導出した。更にこの最適範囲の条件から、アメリカ・カナダが設定をしたECAに関する知見を導き出すことができた。
Kanemoto, Y. Externalities in Space, Fundamentals of Pure and Applied Economics, 11 43-103, 1987.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、次に示す3つのテーマについて研究を行い、定量的な視点からどのような制度にてECAを日本に設定すべきなのかを分析することとしている。① 大気汚染物質の削減政策に関する既存文献のサーベイ、② 最適なECA設定範囲と日本経済への影響に関する定量分析、③ 大気汚染物質排出の少ない船舶へのシフトを促す政策の定量分析。
2012年度は主に①と②の途中まで達成できた。具体的な達成度合いは、研究実績の概要に記載している。そして、『東京都市大学環境情報学部紀要』第14号に2012年度の研究成果をまとめ、発表している。加えて、2012年度の成果をブラジルのリオデジャネイロで7月に開催される第13回世界交通学会にて発表する。発表審査には既に通過し、学会発表のSelected-paperに選定されることも決まっている。②において研究することとなっている最適なECAの設定範囲については、簡単な理論モデルを構築しているものの、定量的な分析はまだ行っていない。
以上のことから、①は完了し論文としてまとめている。そして②についてはまだ途中であるものの、一部を学術論文としてまとめ、学会発表することも決定している。

今後の研究の推進方策

前述にもある通り、本研究は大きく3つの事を行う予定であるが、本年度は② 最適なECA設定範囲と日本経済への影響に関する定量分析を中心に行う。最初に、ECAの最適範囲に関する定量的な分析を実施する。簡易理論モデルは構築しているものの、定量的な把握は行っていない。そこで、ECAに関する主体とくに船舶と大気汚染物質放出と拡散についてモデル化を行い、コンピュータシミュレーションを通じて定量的にECAの最適範囲や主体の行動について把握、分析を行う。シミュレーションには、エージェントベースシミュレーションを採用する予定である。エージェントベースシミュレーションを用いることで、船舶一隻一隻が海域に設定されたECAに対してどのように航路(行動)を変更させるのか、また船舶から排出された大気汚染物質によって政府がECAの範囲をどのように変更するのかを分析することが可能となると判断される。
そして、ECA導入による日本経済への影響に関する定量的な分析のための準備を実施する。ECAを日本の海域に設定することにより、船舶事業者はECA規制への具体的対応(大気汚染物質削減装備の導入や燃料の切り替え)に迫られ、それらの費用を輸送サービス価格に転嫁することも予想される。そして、それにより日本の物流コストを上昇させる可能性もある。このようにECAが日本の物流コスト、ひいては日本経済に(さほどではないと予想されるものの)どの程度の影響を与えるのかを試算する。日本経済への影響は、産業連関分析などを用いることを考えている。この分析においては、手塚広一郎先生(日本大学)などに相談し、分析結果が現実的か等について意見を貰うことにする。

次年度の研究費の使用計画

2012年度にまとめた成果をブラジルのリオデジャネイロで7月に実施される第13回世界交通学会で発表することを予定している。なお、その学会の発表審査を既に通過した。また前述の通り、学会のSelected-paperに選定されることも決まっている。この世界交通学会で成果を発表するために、ブラジルまでの渡航旅費が必要となる。
2013年度はECAの効果を定量的に把握するためにコンピュータシミュレーションを実施する。シミュレーション手法は多数あるが、エージェントベースシミュレーションを主に実施する予定である。このシミュレーションを実施するために、ソフトウェアの購入を行う。本来昨年度中にこのシミュレーションを開始する予定であった。だが、研究の進展状況もあり、昨年度ソフトウェアを購入せず、一部が残金として残った。この残金もソフトウェアの購入に充てる予定である。
最後に、今年度実施した研究を英語で論文としてまとめ、来年度発表することを検討している。そこで、その論文の英語のチェック等に費用が生じる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 船舶からの大気汚染物質放出規制海域(ECA)の設定範囲に関する現況と考察2013

    • 著者名/発表者名
      岡田啓
    • 雑誌名

      東京都市大学環境情報学部紀要

      巻: 14 ページ: 49-56

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公開日: 2014-07-24  

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