本研究は、船舶起因の大気汚染物質を削減するため大気汚染物質放出規制海域(Emission Control Area、ECA)を設定した場合における効果と影響を分析し、どのようにECAを設定すべきなのかという政策ガイドラインを導き出すことを目的としている。なお、本研究は定性的な分析よりも、ECAのモデル化を行い、数値シミュレーションを開発することで、ECAの効果について分析を行うことを試みている。 上記の目標を達成するために2014年度は、ECAの簡易的な理論モデルに基づき、数値シミュレーションを作成した。数値シミュレーションは、2つの部分から構成されている。第一の部分は2013年に主に構築した船舶から排出される大気汚染物質の拡散に関するシミュレーションである。第二の部分は、船舶が航行する位置を意志決定するための費用モデルを作成し、それに基づき航行する位置を決定する数値シミュレーションである。航行位置を決定する費用モデルは座礁のコストと燃料のコストを盛り込んだモデルとなっている。船舶は一隻一隻形状等が異なるため、費用の関数も異なっている。これを費用モデルのパラメータを異なることで表現をした。2つの部分を作成したので、それらを使ってECAの費用便益を分析できる数値シミュレーションモデルを構築した。 作成した数値シミュレーションを使い、ECAの最適範囲に関する分析を行った。同時に、シミュレーションで使用している各種パラメータを変更し、どのパラメータがECAの最適範囲を変更させるのか分析をした。それらを総合して、ECAの範囲を決める際の簡単なガイドラインを作成した。
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