研究課題/領域番号 |
24710053
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
尾崎 平 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (40351499)
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キーワード | 気候変動 / 内水氾濫 / CSO / 適応策 |
研究概要 |
本研究は、2050年を目標年次とし、都市域への水害影響、水質汚濁影響を評価する(脆弱性評価)プロセスモデルを構築することを目的としている。本年度は2ヶ年目であり、都市水害・水環境影響推定モデルの構築と集中豪雨による都市域の脆弱性評価を行った。 1. 都市水害・水環境影響推定モデルの構築 都市水害モデルとして、地上および地下空間の水害を表現できるモデルの構築と検証を行った。また,水理モデルとGIS-DBを関連づけるサブモデルを構築し,水理計算結果を視覚的に表現できるものへとモデルを改善した。また、水環境影響については、過去と現在のCSOを引き起こし、水環境に影響を与える降雨の分析を行い、外力の傾向分析を行った。 2. 集中豪雨による都市域脆弱性と適応策の評価モデルの構築に関する研究 都市水害による影響については、短時間集中豪雨として、総降雨量は同じであるが異なる降雨強度の場合の影響について解析、考察し、都市域の脆弱性と、その対応策について考察・評価した。また、水環境影響については、過去と現在の外力の変化について、考察し、現在の方がより、水環境へのインパクトが大きい降雨が増えていることを統計的に明らかにした。また、簡易判定チャートを作成し、降雨強度と無降雨継続時間から汚濁負荷を推定する方法論を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市水害・水環境影響推定モデルの構築および集中豪雨による都市域モデルの弱性と適応策の評価モデルの構築のそれぞれにおいて、開発と研究が進展しており、当初計画の目標を達成している。 都市水害・水環境影響推定モデルとも構築することができた。都市水害モデルについては、査読付き論文として掲載され、また、国際学会でも発表を行い、成果を上げることができた。水環境影響推定モデルに関しては、推定に必要なパラメータセッティング方法を確立し、より高精度の推定ができるようになった。 また、将来推計のために必要となる不確実性を考慮した外力の設定について、モンテカルロシミュレーションを用いた幅の推定による都市水害の脆弱性とCSOによる汚濁負荷の影響に関する方法を構築した。 また、学会を通じたシンポジウムを開催し、約50名の行政・民間企業(ゼネコン、コンサル)、学術機関の人を対象に研究成果に関して公表も行った。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画当初は、IPCCの第4次レポートをベースとした評価を想定していたが、IPCCの第5次レポートが平成25年度末~平成26年度の早い時期に公開されるため、その最新のレポートを考慮した集中豪雨による都市域脆弱性評価と適応策の評価を行う必要がある。 外力は2010年~2050年までを5年ごとに推定し、各シナリオに基づく外力により想定される2050年の社会への影響を推定モデルにて定量化し、社会的意味づけをリスク論的思考に基づき考察する。また、適応シナリオとして、現状の社会インフラ、制度による対応を行った場合(BaUシナリオ)ならびに類型化した政策、技術等の組み合わせによる対策シナリオを複数設定(CM1、CM2・・・)し、効果について考察を行う。 また、各適応策のケース毎にフィードバック評価を行い、その妥当性、有効性を検証しながら、適応策の評価を行う。適応策の類型化・指標に関しても初年度のものをフォローアップし、再設定の必要性を検討する。 本研究の最終成果の到達目標は、上記のプロセスを通じて得たことを総括し、気候変動に対する適応策に関する論理構造を明確にし、2050年までに想定される集中豪雨に対する対応策のロードマップ作成支援に寄与する枠組み、モデル構造、計算手法の提案を行うことである。 以上の研究を精力的に取り組むと共に、平成25年度の研究成果を9月に開催される国際学会にて発表を行い、海外の研究者とも意見交換を行いつつ、より良い研究へと導く。また、国内の学会においても成果を発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル構築に使用する計算ソフトが、通常のバージョンアップではなく、別ソフトとしてリリースされたため、別予算にてリリースされたソフトを購入した。そのため、当初、予定していた期間よりも計算ソフト使用料が軽減され、次年度使用額が生じた。 計算ソフト使用料(保守料)が必要である。また、平成25年度の研究成果をマレーシアで開催される国際会議(ICUD2014)にて発表するため,海外旅費を計上し、国内の学会でも発表するため国内旅費が必要である。また,研究遂行にあたり必要となる解析補助のために関西大学大学院生に対して謝金が必要である。
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