中国の「退耕還林」政策は、食料増産のために森林を破壊してきた人類史において、耕地面積を縮小しながら森林を回復させようとする挑戦的な試みである。本研究は、「退耕還林」政策終了後(以下、ポスト「退耕還林」と称す)に住民が森林の質を高めながら持続的な生活を営む可能性(未来可能性)を評価することによって、食料生産と環境破壊・貧困をめぐる問題の解決に貢献しようとするものである。研究の結果、森林回復による環境保全のみでは農村の持続には不十分で、農民の収入源へのアクセスのしやすさなど諸条件が、耕作に代わる産業の振興につながり、ポスト「退耕還林」における農村の未来可能性の担保へとつながるものと思われた。
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