研究課題/領域番号 |
24710059
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮本 真由美(松原真由美) 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10457278)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA複製 / 相同組換え |
研究概要 |
最も一般的なゲノム損傷許容機構は、損傷乗り越え合成(TLS)と相同組換え(HR)である。TLSでは、TLSポリメラーゼが損傷により停止した複製ポリメラーゼに一時的にスイッチし、損傷部位のDNA合成を行う。HRでは、損傷により停止した複製フォークがHRにより処理され複製が再開される。しかし、高等真核生物では、停止した複製フォークがどのような機構で処理され、さらに複製が再開されるかについての詳細は明らかにされていない。本研究では、停止した複製フォークのHRを介した再活性化におけるTLSポリメラーゼの役割を明らかにする目的で研究を行った。この目的で、DNA修復欠損細胞のゲノム損傷誘発剤(Decitabine)感受性を調べた。感受性の分析はコロニー形成法で行った。Chinese hamster由来のHR欠損細胞であるirs1SF(XRCC1)及びRAD51D(RAD51D)は、修復野生型細胞(AA8)に比べDecitabineに高感受性を示した。DecitabineはDNAに取り込まれ、DNA cytosine methyltransferase反応中間体をトラップし複製を阻害することから、停止した複製フォークの再活性化にはHRが必要であることが確認された。現在、TLSポリメラーゼの関与を調べるため、TLSポリメラーゼ欠損MEF細胞のDecitabine感受性を調べている。ゲノム損傷により複製フォークが停止すると、フォークが崩壊しDNA二重鎖切断が生じることが報告されている。RAD51はこの部位に集積しフィラメントを形成し、相同配列の鎖交換反応が進行すると予想されることから、RAD51核内集積及びヒストンH2AXのリン酸化(γH2AX)を調べた。Decitabine処理後の細胞では、RAD51及びγH2AXの核内フォーカス数の有意な上昇が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA修復欠損細胞の感受性検討に基づき、HRを介した複製フォークの再活性化を調べるための実験系を確立し、TLSポリメラーゼの関与について検討を開始した。HR因子の核内集積状態解析については目途がついたが、TLSポリメラーゼの集積状態の解析は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
TLSポリメラーゼ欠損MEF細胞の感受性に基づき、複製フォークの再活性化に関与するTLSポリメラーゼを特定する。また、HAタグを付加したTLSポリメラーゼをMEF細胞で発現させ、 RAD51とTLSポリメラーゼの核内共局在及び相互作用を蛍光顕微鏡及び免疫沈降で調べる。さらに、ヒトTLSポリメラーゼを、ヒト細胞でノックダウンして、HRへの寄与を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施に必要な消耗品及び学会旅費(研究成果発表)に使用する。
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