研究概要 |
昨年度の計画に基づき、ラジカルにより発生した損傷ヌクレオシドと脳機能障害発生のメカニズムを総合的に明らかにするためにトリプルトランスジェニック(3xTg)アルツハイマー病モデルマウスを用いて大脳皮質および海馬核DNA中の8-oxo-dGuo、8-oxo-dAdoの定量をLC-MS/MS法を用いて行った。その結果、加齢に伴い8-oxo-dGuoの蓄積量は上昇するがnon-Tgマウスと3xTgホモマウスの間で有意な差はないことが明らかになった。8-oxo-dAdoに関しては検出限界以下であったため定量はできなかった。また、プリンヌクレオシドへのUV照射の影響を明らかにするためにUV-A,B,Cの照射をアデノシンおよびグアノシンに対して行ったところ、X線照射の結果と同様にアデノシンの酸化修飾体である8-oxo-Adoの生成量が顕著に上昇し、その量はUV-C,UV-B,UV-Aの順で多かった。また2-OH-AdoのUVによる生成も確認できたが、その量は8-oxo-Adoに対してUV-Aで約1/100, UV-Bで約1/150, UV-Cで約1/60とかなり少なかった(200 kJ/m2照射の場合)。グアノシンの場合には8-oxo-Guoの生成はUV-C, UV-B, UV-Aの順で多くなることが確認できたが、全体的な生成量は非常に少ないということが分かった。 X線照射によって生成する様々な損傷ヌクレオシドを同定するためにマトリックス支援レーザー脱イオン化法を用いた飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いることにし、分析の最適条件の確立を行った。ヌクレオシドの分析にはマトリックスとしてα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を用いてThin-layer法による分析を行うことが最適であるということが確認できた。
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